研究課題/領域番号 |
15K00590
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
櫻間 晴子 山形大学, 理工学研究科, 助教 (90456426)
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研究分担者 |
高塚 由美子 山形大学, 理工学研究科, 助教 (70570810) [辞退]
原 富次郎 山形大学, 理工学研究科, 教授 (70616193) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | ポリ塩化ビフェニル / 芳香環水酸化ジオキシゲナーゼ / 環境浄化 |
研究実績の概要 |
本研究では高塩素化ポリ塩化ビフェニル類(PCB)に対して高分解性を示す芳香環水酸化ジオキシゲナーゼ(BDO)の変異体酵素の創製を目指すことを目的とする。本年度はComamonas属由来のBDOを対象に下記2点の実験を実施した。 (1)基質特異性に関与するアミノ酸残基の同定 本酵素のPCB複合体の推定構造を基に、基質結合部位ならびにその周辺部位を候補として37種類の1重変異体酵素を作製し、これらの特性を解析した。その結果、元の酵素では分解できない、もしくは分解効率が低い4または5塩素化PCB異性体の一部を分解できる変異体酵素を数種類取得することに成功した。しかし、どの変異体酵素も、5塩素以上の高塩素化されたPCB 異性体を多種類含むPCB標品であるカネクロールKC-500に対しては高い分解効率を示さなかった。 (2)BDOの末端ジオキシゲナーゼを構成する小サブユニット(BphA2)の基質特異性への効果の検討 本酵素ならびに本酵素と基質特異性が異なるBDOを構成する大小サブユニット(BphA1/BphA2)を相互に交換した2種類のハイブリット酵素を作製し、その特性を解析した。その結果、両酵素とも元の酵素のBphA1と同じ基質特異性を有しており、BphA2の基質特異性への効果は観察されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はComamonas属由来のBDOの変異体解析を予定通り終了し、基質特異性が拡大した変異体を取得することに成功した。BDOの変異導入が基質特異性の拡大に有効であることを示したことから、研究進展状況は順調であると言える。よって、今後は、より高塩素化されたPCB 異性体に作用し、カネクロールKC-500に対して高い分解効率を有するBDOを取得することが課題である。
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今後の研究の推進方策 |
Comamonas属由来のBDOの改変により基質特異性の拡大に成功したものの、6塩素以上の高塩素化PCBに作用する変異体酵素は得られなかったことから、当初計画していた本酵素の多重変異体酵素の解析を行うより他のBDOの変異体解析を試すことが有効であると考え、下記の実験を行う予定である。 (1)他のBDOのPCBに対する分解特性の解析 他の有望なBDO遺伝子を人工的に合成し、本遺伝子の大腸菌での発現条件を検討する。発現を確認したBDOのPCB分解特性を解析する。 (2)BDOの変異体解析 PCB分解特性がユニークなBDOに対して、本酵素と同様に、PCB複合体の推定構造を基に基質結合部位ならびにその周辺部位を候補として変異体解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬などの消耗品費が当初の予定よりも少額で済んだことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度とは異なる芳香環水酸化ジオキシゲナーゼの変異体解析を行うことを計画しており、本酵素の発現用ベクターを作製するために消耗品が必要で、そちらに使用する予定である。
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