研究課題/領域番号 |
15K00597
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研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
上道 芳夫 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90168659)
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研究分担者 |
神田 康晴 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70447085)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 環境技術 / 廃プラスチック / リサイクル / 触媒 / ゼオライト / 芳香族炭化水素 |
研究実績の概要 |
廃プラスチック混合物を石油化学工業の基礎原料へ選択的に分解する資源循環型ケミカルリサイクルシステムを確立するため,ポリオレフィン/ポリスチレン混合物から芳香族炭化水素を高収率で得るプロセスにおけるゼオライト系触媒の作用と反応機構について検討した。Si/Al原子比が異なる種々のH-ZSM-5ゼオライトにガリウムを担持した触媒を用いて窒素気流中でポリオレフィン/ポリスチレンを分解すると、ポリスチレンに起因するコーキングが抑制され触媒活性は持続し,有用な芳香族が高収率で得られた。Si/Al比が小さく酸性度が高いH-ZSM-5にガリウムを担持した触媒ほど、芳香族収率は高くコーキング抑制効果も大きいことがわかった。ガリウムを担持しないH-ZSM-5では芳香族収率は低いが,ガリウム担持触媒と同様にポリオレフィンによるポリスチレンのコーキング抑制は起こった。水素気流中(外部水素添加系)での反応では,ガリウム担持触媒でコーキングが抑制され,一方H-ZSM-5単独では外部添加水素の効果は顕著ではなかった。このように気相水素の効果はガリウムの有無によって異なるが、プラスチック混合物の分解ではガリウムの有無に依存せず同様のコーキング抑制効果が発現することは、ポリオレフィンの分解・環化過程で発生する水素原子の作用によることを示している。H-ZSM-5のように水素化能が乏しい触媒でもポリオレフィン水素を利用したプラスチックの反応制御が可能なことが明らかになり,この現象は多くの触媒系で発現することがわかった。また,低分子モデル化合物を用いた反応機構の解明とPETの分解についても検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の主要な検討課題であったポリオレフィン/ポリスチレンの分解におけるガリウムの有無による触媒作用の差異を,ポリオレフィン水素と外部添加水素の効果から明らかにした。一方,低分子モデル化合物を用いた反応機構の検討は完了せず次年度も検討を要する。しかし,次年度に予定していたPETの分解反応を前倒しで検討することができた。当初計画における検討項目の年度が若干入れ替わったが,全体として研究はほぼ順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続いて、低分子モデル化合物としてスチレンモノマー/オクテン混合物を用いた水素移行型分解反応機構の解明を行い、プラスチック混合物の分解におけるポリオレフィン水素の役割を詳細に解明する。 また、PET/ポリオレフィン混合系の反応における水素の効果を検討し、ポリスチレン以外のプラスチックの分解においてもポリオレフィン水素を利用した反応制御が可能かどうかを明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
第4回高分子学会グリーンケミストリー研究会シンポジウムへの参加申込をしていたが、急用により参加を取り止めたため旅費に残額が生じた。また、状況に応じて実施する分析装置の修理・点検とヘリウム等の充填ガス類の発注の時期が次年度にずれ込んだため、残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
分析装置の修理・点検経費と充填ガス類購入経費はそのまま使途に変更なく平成28年度に使用する。また、旅費は当初計上していた平成28年度旅費に上乗せして使用する予定である。
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