研究課題/領域番号 |
15K00601
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
はばき 広顕 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (00302935)
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研究分担者 |
江頭 竜一 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (90213529)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 開発途上国向けバイオディーゼル製造 / 高効率エステル交換反応 / 脱酸処理 / メタノール回収 / 副生成物活用 |
研究実績の概要 |
開発途上国向けバイオディーゼル燃料製造プロセスの開発において,原料植物種子の圧搾工程から製品バイオディーゼルの製造および種々副生成物の有効活用に関する研究を行っている。主要製品であるバイオディーゼル製造工程において,従来の反応法では多量のアルコール(主としてメタノール)が必要とされており,これに伴い未反応アルコールの回収・再利用が製造工程に大きな負荷となっており,また副生成物の処理なども重要な課題となっている。これらの課題に対して去年度においてはエステル交換反応の高効率化および未反応アルコールの効率的な回収に関する研究を行った。開発途上国への技術開発を主とした目的としており,特別な装置および原料などを使用すること無く,従来の汎用性のある装置により構成されたプロセスによる生産を検討した。 エステル交換反応の基礎研究として,以前の研究において平衡反応定数を測定しており,この結果を用いて多段における反応効率の向上に関する検討を行った。従来方法では1段による反応システムでは,原料のモル比で約6のメタノールが必要とされていたが,本研究において提案した向流接触による2段の反応器を用いることにより必要なメタノール量を約半分へ低減,リサイクル量を約半分以下に低減できた。 一方で,反応後に得られる副生成物であるグリセリンの活用に対し,メタノール回収における分離法に使用することを提案し,平衡状態の測定などの基礎情報(メタノール,グリセリドおよびバイオディーゼル系の液液平衡など)に関する測定を行い,副生成物であるグリセリンを抽出溶媒としたメタノールの回収プロセスを検討し,現時点ではプロセス構築および必要なエネルギーの推算を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非食用植物を原料植物とした開発途上国向けバイオディーゼル燃料製造プロセスの開発において,種子の圧搾から製品であるバイオディーゼル燃料を得るまでの一連の製造工程において,前処理工程,エステル交換反応工程,次いで後処理工程に関する研究を行った。 前処理工程では遊離脂肪酸の除去として脱酸処理を行うが,製品の収率向上のため酸触媒を用いたエステル化反応による処理を選定した。エステル化反応の反応平衡および反応速度を測定し,平衡定数および反応速度定数を求めた。続けて向流接触による多段反応器によるプロセスの計算を行っており,この結果を学術論文へ投稿する準備も進めている。 エステル交換反応工程では,メタノールを用いたトリグリセリドのエステル交換反応に関して平衡定数および反応速度定数を以前に測定しており,これら定数を用いて向流接触による多段反応器によるプロセスの計算を行った。反応器を多段化することにより必要なメタノール量を大きく低減させる事を示すことができ,この結果の一部をAsian Pacific Confederation of Chemical Engineeringにおいて発表し,またこれより進めた結果をまとめ学術論文へ投稿する準備を進めている。 後処理工程では,メタノール回収に関する研究を主として進めた。エステル交換反応において得られる副生成物のグリセリンを溶媒として使用し,抽出によるメタノールの回収プロセスを提案した。グリセリン,メタノールおよびバイオディーゼルの系における液液平衡を測定し,活量係数推算モデル(UNIFAC法)を用いて液液平衡の推算を行い,これら結果を元にメタノール回収に関してプロセス計算を行った。本結果を学術論文へ投稿する準備も進めており,研究全体において概ね順調な進捗であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
非食用植物(ジャトロファなど)の種子の圧搾工程後に得られる残渣やバイオディーゼル製造において得られる副生成物のグリセリンの活用について検討する。 圧搾残渣の活用に対して,ジャトロファ種子の圧搾残渣に対して熱処理を行い,得られる気体,液体,固体生成物のキャラクタリゼーションを行う。雰囲気ガスおよび熱処理温度を変化させ得られる生成物への影響を調べる。生成気体に対しては,熱処理操作条件による一酸化炭素および水素の生成量への影響を検討し,エステル交換反応に必要な量に対して合成可能なメタノール量を算出する。生成液体に関しては,得られる有機物含有量を測定,およびこれら熱量の測定により,重油相当の燃料油としての可能性を推定する。生成固体は活性炭として使用し,操作条件による活性炭の有機物除去性能などでキャラクタリゼーションを行う。 グリセリンの活用に対して,エステル交換反応工程において得られる副生成物の精製に関する検討を行う。エステル交換反応後に得られるグリセリンは,未反応メタノールを主として未反応グリセリド,メチルエステル等を不純物として含むためこれらを分離し精製グリセリンを得る。まず,メタノールの回収に対して,蒸留および溶媒抽出による検討を行う。他の不純物に対しては上述熱処理により得られる活性炭を用いたグリセリンの精製を検討する。このように圧縮残渣の熱処理により,プロセス全体の効率化に関する研究を進める。
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