研究課題/領域番号 |
15K00601
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
はばき 広顕 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 助教 (00302935)
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研究分担者 |
江頭 竜一 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 准教授 (90213529)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | バイオディーゼル製造プロセス / ジャトロファ油 / 圧縮残渣の熱処理 / 熱処理生成物利用 |
研究実績の概要 |
ジャトロファ油由来のバイオディーゼル製造において,副生成物であるジャトロファ殻の有効利用も重要な課題となっている。本研究ではジャトロファ殻を熱処理することにより,得られる気体,液体および固体生成物のキャラクタリゼーションを行い,有効利用を検討した。気体生成物は,水素,二酸化炭素,一酸化炭素およびメタンなどが含有されていた。熱処理温度の増加と共に水素,二酸化炭素,一酸化炭素の含有率は増加し,1073K(本実験における最高処理温度)において最大となり,推算した気体の発熱量も最大となった。液体生成物(粗タール)は単蒸留により分離し,軽質タールおよび重質タールを得た。粗タールに対して軽質タールは約0.97の収率であり,水分がその0.8程度含まれており(水蒸気賦活のため),酢酸,メタノールおよびフェノール類が含有されていたが,その割合は低かった。固体生成物として活性炭を得た。熱処理温度の増加と共に固体収率は減少した。また比表面積は熱処理温度と共に増加し,1073Kにおいて812m2/gとなった。これをグリセリン-メタノールおよびグリセリン-モノオレイン系における吸着平衡を測定し,調整した活性炭によりメタノールおよびモノオレインを吸着することを確認した。 熱処理によって得られた気体および固体生成物を利用したバイオディーゼル製造プロセスを提案した。気体生成物に関しては,ジャトロファ殻の熱処理工程に使用する熱源もしくはエステル交換工程において使用するメタノールの原料としての利用を検討した。また固体生成物である活性炭の適用に関してはバイオディーゼル製造工程において副生成物として得られるグリセリンの精製に対して,活性炭を用いた処理を検討した。今年度においては,気体生成物の熱処理工程における熱源およびメタノールの原料としての利用に関して,製造プロセス全体における効率化を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度に引き続き,非食用植物を原料とした開発途上国向けバイオディーゼル燃料製造プロセスの開発において,平成29年度では圧搾残渣の熱処理において得られた生成物のキャラクタリゼーションおよび製造プロセス内における活用に関する研究を行った。 圧縮残渣の熱処理においては,気体,液体および固体生成物のプロセス内における活用を検討した。気体生成物に関しては熱処理操作における熱源としての活用,もしくは含有される水素,一酸化炭素およびメタンを用いてメタノール(エステル交換工程において使用される)を調製する原料としての活用に関する検討を行った。固体生成物質(活性炭)に対して,これを活性炭として使用しエステル交換反応において得られる副生成物であるグリセリンの精製に関する検討を引き続き行い,グリセリン中に含まれる不純物(メタノールおよびモデルトリグリセリド)の除去に関する検討を行い,生成するグリセリンを十分に処理することが可能な量の活性炭が得られることを示した。一方で,液体生成物に関しては,予想していた以上に有機物が含有されていなかったことなどからプロセス内における活用は検討中である。 また研究成果の一部である原料油の前処理プロセスに関する研究を” Deacidification process of crude inedible plant oil by esterification for biodiesel production”としてまとめ海外の論文誌へ投稿し掲載が決定した。また原料油中のリンの除去に関する研究の結果を本年秋に開催される化学工学会第50回秋季大会において発表,また圧搾残渣の熱処理に関する研究結果も学術論文へ投稿する準備を進めており,進捗は予定よりもやや遅い(熱処理実験において予想より時間を要した)が,まとめの年となるので,研究成果の発表を重点的に進める。
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今後の研究の推進方策 |
非食用植物の一例としてジャトロファを原料として用いた場合における開発途上国向けバイオディーゼル製造プロセスの改善に対して,圧搾残渣の熱処理により得られる生成物の適用に関する研究を引き続き行う。上述の通り,気体生成物の利用に関しては熱処理工程における熱源としての利用およびメタノール合成における原料としての利用,液体生成物の利用に関しては熱処理工程における熱源としての利用,および固体生成物を用いたバイオディーゼル製造において得られる副生成物グリセリンの精製について引き続き検討する。 各熱処理条件に対して,ジャトロファ果実単位質量より得られる気体,液体および固体の生成量に対して,生成気体に対しては熱処理工程において必要な熱量に対する気体より得られる熱量,および生成ジャトロファ粗油に対する気体より得られる合成可能なメタノール量に関して検討する。生成液体に対しては熱源としての利用を考慮し,気体の熱源としての利用と同様に検討する。また生成固体に対して,エステル交換工程において生成されるグリセリンの精製に対する必要な活性炭量などを検討する。プロセス内におけるこれら生成物の活用に関して,物質およびエネルギー収支から利用可能性に関して検討する。このように圧縮残渣の活用によるプロセス全体の効率化に関する研究を進め,本年度においてまとめる。またこれら研究結果の公表のため,学術論文の作成も進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
補助事業期間の延長に対して,補助実験の実施および研究成果の公表のための作業を行うことが主たる理由である。ジャトロファ殻の熱処理に関して再現性を確認するための再実験の実施,学会参加および論文投稿などの作業のため1年間の延長が必要となった。
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