延長した補助期間において,原料油前処理におけるリン脂質の除去,および圧搾残渣の熱処理により活性炭を調整し,これを用いてエステル交換反応工程後に得られるグリセリンの精製の検討を行った。 エステル交換反応の効率を低下させる成分である水,遊離脂肪酸,およびリン脂質が元々原料植物油には含まれているため,前処理においてこれら不純物の除去が必要である。このうち遊離脂肪酸の除去(エステル化によるメチルエステルへの変換)は以前に行っており,今回はリン脂質の除去を検討した。従来アルカリを用いた除去は行われてきたが,製品バイオディーゼルの収率を低下させるため,酸(硫酸)を用いた除去を検討した。本方法では脂溶性リン脂質を水溶性リン脂質へと変換させ,次いで行う水洗により十分にリンを除去できることを確認した。またこの際,遊離脂肪酸を減少させることは無かった(遊離脂肪酸を減少は製品の収率の低下をもたらす)。本結果は,化学工学会第50秋季大会において発表し,また投稿論文の準備も進めている。 グリセリンの精製においては,まず圧縮残渣を化学賦活(リン酸を使用)により活性炭を調製した。比較的低温の熱処理において得られた活性炭は,比較的高い比表面積でありかつ収率も高かった。この活性炭を用いてグリセリンに含まれる不純物(主としてメタノールおよびモノグリセリド)の除去を検討した。これら不純物に対して吸着平衡を測定し,吸着等温線を得た。得られた吸着平衡関係および簡単な物質収支を用いて,バイオディーゼル燃料製造プロセス内におけるエステル交換反応工程において得られるグリセリンの精製に対して必要な活性炭の量を推算し,得られる圧搾残渣を用いることにより十分な量の活性炭を調整することが可能であった。本結果をJournal of Environmental Chemical Engineeringに投稿し,掲載が決定した。
|