研究課題/領域番号 |
15K00603
|
研究機関 | 西日本工業大学 |
研究代表者 |
山本 健太郎 西日本工業大学, 工学部, 准教授 (40305157)
|
研究分担者 |
根上 武仁 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (30325592)
中島 常憲 鹿児島大学, 理工学域工学系, 准教授 (70284908)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 産業廃棄物 / リサイクル材 / 藻場基盤材 / 3R / 環境材料 / 低環境負荷 / 長期モニタリング / 海の森づくり |
研究実績の概要 |
開発した藻場基盤材を2013 年5 月に鹿児島湾に海中投入・設置してから2016年10 月までの3年5カ月に渡る海中モニタリングを定期的に実施してきた。その結果、現在のところ、陶磁器破砕片や少量の鉄分(使い捨てカイロ)の混入が海藻の活着やその後の生育にたいへん有効的であったと言える。 これまでの成果を受け、火山灰のみならず、二種類の産業廃棄物を有効活用した新たな環境に優しい藻場基盤材の開発を実施した。一つ目は、陶磁器破砕片(粒径2~4mmと0.9mmを使用)と廃石膏を主としたものである。二つ目は、木質バイオマス発電から排出される流動砂、陶磁器破砕片(粒径2~4mm)と廃石膏を主としたものである。両方ともに鉄分としては使い捨てカイロを使用することにより、低環境負荷型の藻場基盤材の製作を実施することができた。なお、セメントは補助材として利用した。陶磁器破砕片と廃石膏を主としたものの配合は、廃陶磁器だけで約60%あり、廃石膏も約30%含まれている。 次に、個々の試料の元素含有量試験と人工海水中に侵した元素分析においても六価クロムなどの有害元素の溶出がなかった。よって、これまで強度や環境面で問題が全くないことを確認した。なお、どの配合ケースにおいても、主固化材である廃石膏の補助材として、セメントを3-4%程度混入した。製作された基盤材は円盤型のhandy typeで、持ち運びが可能となっている。 さらに、福岡県苅田町の白石海岸等に海中投入を実施した。今回、確認した基盤材では表面がある程度、波浪の影響などで削れていた。そして、海藻などが活着しやすい状態にはなっており、カキの活着もあった。また、強度面も半永久的なものではなく、壊れて自然に還るような基盤材に近くなったと考えられ、今後の海中投入後のモニタリングに期待できる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者が所属研究機関を異動したこともあり、桜島火山灰のみならず、二種類の産業廃棄物を有効活用した新たな環境に優しい藻場基盤材の開発を実施することができた。一つ目は、陶磁器破砕片(粒径2~4mmと0.9mmを使用)と廃石膏を主としたものである。二つ目は、木質バイオマス発電から排出される流動砂、陶磁器破砕片(粒径2~4mm)と廃石膏を主としたものである。両方ともに低環境負荷型の藻場基盤材であり、鉄分としては使い捨てカイロを使用した。 これまでは海中モニタリングは鹿児島湾でのみ実施してきたが、H28年度はこれまでの海域に加え、福岡県苅田町白石海岸と長崎県大村湾にも低環境負荷型となる藻場基盤材を製作し、海中投入することができた。ただ、モニタリング地点などは今後少し移動させる予定である。 また、配合割合では、固化材の補助としてのセメント量を減らすことを試み、約4%前後混入した藻場基盤材を製作し、試験的に海中投入した。そして半年間、モニタリングを実施した。その結果、これらの基盤材では表面がある程度、波浪の影響などで削れていて、海藻などが活着しやすい状態にはなっており、カキの活着も見られた。さらに、強度面も半永久的なものではなく、壊れて自然に還るような基盤材に近くなったと考えられ、今後の海中投入後のモニタリングに期待できると考えられる。なお、セメントの配合割合が0%の場合、海中投入には強度的にも支障が全くなく、環境にも優しくて良い。しかし、約一ヶ月後の海中モニタリングでは基盤材が徐々に溶けて、なくなることが確認された。 より効果的な産業廃棄物リサイクル材、あるいはセメントに代わる固化材の補助材の発掘や、異なる海域における本格的な海中投入と詳細な海藻生育モニタリングを実施していく予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
海藻活着やその後の生育効果、海水投入後に自然に壊れていくかのモニタリングチェックをすることにより、最適な配合割合、鉄分やカリウムの有効性に関しての検証を実施する。なお、バークや石粉などの混入も考慮中である。次に、藻場基盤材の製作時期、養生時間や製作工程の改善や見直し等も実施する。 昨年、研究代表者が所属研究機関を異動したこともあり、北九州の海域(苅田町白石海岸、長崎県大村湾)においても、低環境負荷型となる藻場基盤材を数十基程度製作し、海中投入し、長期モニタリングを本格的に開始する。 山本が配合割合の修正、試験を行い、藻場基盤材の製作時期、養生時間や製作工程の改善、新たな低環境負荷となるリサイクル材の発掘を実施する。次に、山本、根上が海中モニタリングを実施する。また、山本、中島が環境リスク検査や溶出試験、廃鉄粉の割合の検討を担当する。最終年にもなっていることから、様々な基盤材を今からコンスタントに製作し、随時、海中投入を行い、今年の秋までにこれらの工程をできるだけ多く実施していきたいと考えている。 今後は、沿岸海域環境の改善を主目的に、環境に優しい藻場基盤材を活用した環境改善手法を提案していく予定である。最終的には、経済的、環境的にも優しく、環境教育や防災面にも活用できる産業廃棄物リサイクル材を有効活用した藻礁を創造していきたい。なお、付加価値的なものであるが、学校などにおいて「海の森づくり」などの環境教育の材料として、環境教育を広めていく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者が所属する大学を移動し、少し学会発表を控えたこと、物品などを別の経費で購入したり、モニタリング旅費なども別の経費で支出したことなどが挙げられる。
|
次年度使用額の使用計画 |
基盤材の開発に必要な物品費や消耗品費、鹿児島湾でのモニタリング旅費、九州の海域(福岡県苅田町白石海岸、長崎県大村湾など)での海中投入とモニタリング旅費、研究成果発表(国際会議を含む)のための旅費に使用する計画を立てている。
|