研究課題/領域番号 |
15K00604
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
梁 瑞録 秋田県立大学, システム科学技術学部, 准教授 (10315624)
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研究分担者 |
宮田 直幸 秋田県立大学, 生物資源科学部, 教授 (20285191)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 超臨界水 / 廃電子基板 / リサイクル / バイオリーチング |
研究実績の概要 |
1) 超臨界水による廃電子基板の処理 高温高圧リアクター4590型を用いて超臨界水による廃電子基板(20 mm程度)の処理を実施した。超臨界水の温度と圧力や、基板と水の量(基板の濃度)の廃電子基板の溶解率への影響を調べた。超臨界水で30分間処理した廃電子基板は樹脂類が殆ど分解され、残った固体部分の形は大きく崩れていない。また、非金属類は殆どガラス繊維であり、しかもガラス繊維と金属部分が分離した状態も多かった。ガラス繊維にはガラス成分(Ca, Al等)以外の金属も1%~3%含まれていることが分かった。一度処理する基板の量が増えると処理後の廃電子基板の重さの減少率は低下した。また、水の量の増減による重さの減少率への影響は小さいことが分かった。 2) 処理した廃電子基板の粉砕・分離:一度に処理できる試料は少ないため、手作業で粉砕・分離を行った。乳鉢でたたいて粉砕した後、3 mm~0.15 mmのふるいで篩い分けを行い、篩上の粗粒の金属を精鉱とし、篩下をさらに粉砕・篩い分けを行った。超臨界水の温度・圧力が高くなると、ガラス繊維は脆くなり、粉砕しやすくなることが分かった。また、粉砕と篩い分けだけで、金属品位74%程度、回収率97%の精鉱を得ることができた。特に基板の主な金属であるCuの回収率は99.3%と高く、篩い分けだけでも高い分離効果が認められた。 3) 単離株を用いた選別精鉱のバイオリーチング 取得した好酸性鉄酸化細菌の集積培養系NEを用いて45℃、pH1.85の条件で、96時間のバイオリーチングを実施した。超臨界水で処理し、粉砕と篩い分けで得られた粗粒の精鉱(3 mm以上)の銅の浸出率は30%以下で低かったが、粗粒精鉱を0.5 mm以下に粉砕すると、銅の浸出率は70%で、亜鉛は81%、マンガンで83%、ニッケルで72%と高くなった。浸出率は粒度の影響が大きいことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、おおむね順調に進展している。超臨界水による廃電子基板の処理では、基板構成の主な樹脂類の溶解率と温度、圧力、基板および水の量などの関係を検討した。超臨界水で処理した試料の新しい粉砕法の開発では、主にすり潰しと衝突法を利用して検討した。超臨界水での処理条件と金属の単体分離性を評価した。粉砕方法による篩い分けの分離効果への影響を検討した。ただし、手作業で作業量が多いため、新しい粉砕機の試作には至っていなかった。これは計画段階で平成27年度に粉砕機の試作を着手できないことも考えていた。酸化された金属板へのバイオリーチングの適応では、微粉砕した試料の最適なバイオリーチング条件で粉砕および再粉砕せずの金属精鉱への適応を試みた。
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今後の研究の推進方策 |
H27年度の成果をふまえ、省エネ観点から超臨界より低い温度・圧力の亜臨界水で反応温度、圧力と樹脂類の溶解度との関係を明らかにする。また、廃電子基板には多種多様な基板と樹脂があるため、樹脂の溶解率と温度・圧力の精確関係を得にくい。そのため、電子基板のエポキシ樹脂の主な種類を調べ、超臨界水によるその樹脂の溶解率と温度、圧力を解明する。そして、亜臨界水で処理した試料の粉砕と単体分離度を検討し、総合的な最適圧力・温度を検討する。処理した廃電子基板の粉砕および粉砕方法の選定では粉砕および篩い分けをそれぞれ単独で行う場合と、粉砕と篩い分けの組み合わせの2つの方法で行う。粉砕方法を決定した後、新しい粉砕機を試作する。また、篩下部分の試料の選別では主に磁力選別で磁性金属とその合金を回収する。酸化された金属板へのバイオリーチングの適応ではpH、温度、金属との接触時間など、金属酸化物のバイオリーチング条件を詳細に検討して最適条件を明らかにし、超臨界水処理後の粗粒金属酸化物のバイオリーチング方法を確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度の粉砕機試作は来年度に変更したので、主な使用予定である試作費が未使用のため。
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次年度使用額の使用計画 |
粉砕機の試作およびそれを用いて実験、改良については、来年度に実施する予定である。平成27年度の次年度使用額は粉砕機の試作および改善に使用する予定である。
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