研究課題/領域番号 |
15K00605
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研究機関 | 県立広島大学 |
研究代表者 |
原田 浩幸 県立広島大学, 生命環境学部, 教授 (20222234)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | 発泡廃ガラス / リン / 吸着材 / 鉄担持 / 牡蠣殻粉末 |
研究実績の概要 |
発泡廃ガラスは資源循環の道筋のない廃ガラスの有効利用を意図し製造されている.収集したガラスを粉砕してカレット状にする.これに発泡を誘因する炭酸塩を添加し焼成することで多孔質軽量発泡資材となる. 現在,緑化・断熱・園芸・浄化・建築・土木などの多くの用途で活用されている. 水質浄化に関して吸着材への適用は用途拡大の一つを模索したものである.その中で吸着材としてリンを回収しようとする報告がある.基本は発泡を誘発する炭酸カルシウムのカルシウムとリンの反応を期待したものである. 吸着材の製造に既存のライン以外の新たな材料の添加や特別な処理工程が必要になる場合には,価格に反映される。その対策として,廃棄物による製造原料の代替や焼成後の製品へ簡易化学修飾が考えられる.本論文では,その課題に対して前者について発泡剤の代わりに牡蠣殻粉末を用いること,後者について製品を硫酸鉄溶液に浸漬したあと加熱乾燥することによる化学修飾を検討した.製造では焼成工程があるので,廃熱利用による加熱乾燥は現実性があると考えられる. 効果は,①牡蠣殻粉末の添加が5%まで小さく,10%の場合には20.8mg / gの吸着量が示された.②発泡廃ガラスを硫酸鉄溶液が蒸発乾燥するまで硫酸鉄の溶液中で加熱することにより,鉄を担持する吸着剤を調製した.その最大飽和吸着量は5.98mg / gであった. 発泡廃ガラスは、このような簡単なプロセスでリン吸着剤にすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)炭酸塩投入の代替としての牡蠣殻粉末投入 炭酸塩添加量の報告の最大飽和吸着量と比較してほぼ同等の最大飽和吸着量を得ることができた。しかしながら,それ以上のメリットについて今の段階において明らかにできていない。 (2)鉄担持発泡ガラスによるリンの吸着 発泡ガラスでのリン吸着の試みは報告されており、それに比べると飽和吸着量の面で前進である。また発泡ガラスを修飾しようとする報告も無いように思われ、その見地からは有用である。発泡ガラスでは浮上の特性を活かした吸着材の用途開発を意図していたが、粒径が小さくなると時間とともに内部まで水が浸透して沈む割合が増えてくる。嵩(ある程度大きくないと)がないと浮上能力が低下するし、浮上能力を優先すると表面積が小さくなって吸着能力は低下する。この兼ね合いの調整を検討する。 また、脱着はアルカリ領域での検討を行ったが、アルカリ域ではガラスへのダメージがある。
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今後の研究の推進方策 |
(1)発泡ガラスについて ・発泡ガラス調整時に成分を検討する既存のいくつかの報告では、そのリン吸着容量は、その他の吸着材に比べて大きくない。しかしそのメリットはリン吸着後、そのまま土壌に還元できることにあり、栽培実験も報告されている。そこで、炭酸カルシウムの代わりに牡蠣殻粉末を使い飽和吸着後の栽培実験をおこなう。また脱離したときの回収物の成分について純粋な炭酸カルシウムや吸着容量がやや高いドロマイト添加吸着材との比較をおこなう。 ・商品として作成された発泡ガラスをリンと親和性の高い鉄などの薬品で処理し、吸着容量を増やす。その増加は認められたものの、やはり数値が他の吸着材に比べて大きくない。特に課題である浮上性を追求した場合には、粒径をあまり小さくすることはできない。そこで、特性を活かすためには他成分の吸着、特に硝酸イオンに着目する。リンと硝酸が共存する排水は多いものと考える。硝酸は0価鉄により還元されて、通常はアンモニウムイオンになるが、条件を整えることで窒素ガスにすることができる。その最適な条件について検討する。 (2)バイオマス吸着材 ・廃棄物中のペクチン構造をケン化することで不溶化し、これにリンと親和性の高い重金属を担持する。この吸着材の特性について評価してきたが、本申請課題では排水の特性による共存成分の影響と吸着材からの分離を検討する。具体的には脱離液の処理で凝集剤として使う鉄イオンがリンの吸着とともに吸着材に吸着補足されるので、これを分離する手法を確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年 追加の採択で課題研究が始まったので、若干の準備不足のため、それが原因となっている。
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次年度使用額の使用計画 |
吸着材の評価を様々な条件で行うために、攪拌しんとう機を導入する。
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