研究課題/領域番号 |
15K00611
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
日比野 俊行 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 環境管理研究部門, 研究グループ長 (70357846)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 層状複水酸化物 / ハイドロタルサイト / ハイブリッドゲル / イオン交換 / 吸着 |
研究実績の概要 |
1価陰イオンへの選択性向上については、単純化させて分かりやすくするため、ゲルと層状複水酸化物(LDH)を複合させてのサンプルは用いず、粉体でのLDHを合成して検討を行った。LDH結晶の微細化による1価陰イオンへのイオン選択性の変化が報告されていたことから、室温での共沈のみによって合成したLDHと、共沈後さらに水熱育成して結晶成長を施したLDHを作製して吸着挙動の差を検討した。また、本検討ではMg-Al系LDHを用いたが、硝酸イオンについてはLDHの組成変化による影響も文献において示唆されていることから、Mg/Al比を変えての検討も行った。硝酸イオン、硫酸イオン及びフッ化物イオンを用いた吸着で陰イオン間の選択性がどの因子によって影響されるのかを探った。検討の結果、本検討の共沈サンプルと水熱育成サンプルでの結晶性の差においては、結晶性よりはMg/Al比が陰イオンの選択性に与える影響が大きいことが示唆された。さらに、Mg-Al系LDH結晶末端では、水酸化マグネシウムと水酸化アルミニウム単体の性質も影響があると考え、それぞれの単一金属水酸化物を共沈によって合成し、陰イオンの吸着挙動を測定し比較した。しかし、特にLDHの上記陰イオン選択性の変化との関連性は見いだせなかった。 粉体LDHでの挙動がゲル複合体ではどうなるかを検証するため、高分子ヒドロゲル内でのLDHの合成を行い、乾燥させてから吸着実験に供した。昨年度同様、ゲルとしてはアガロースゲルを用いた。仕込み比でMg/Al=3、4.5、6で検討したところ、粉体LDHと同様の傾向が見られた。また、含水量が多いサンプルでは乾燥の過程で空気中炭酸ガス由来の炭酸イオン混入が起こるため陰イオン吸着量の減少が懸念される。本検討の複合体でも、乾燥法を真空乾燥と風乾で比較すると風乾ではイオン吸着量の減少が起きた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画に沿い、1価陰イオンへの選択性向上のメカニズム検討を行った。検討項目に入れていた粒子径の効果や単一金属水酸化物由来の効果は、本検討条件下では小さかったが、組成比(Mg/Al)の影響が大きいことを確認し、メカニズム検討は予定通り終了した。上記検討は粉体サンプルを用いて行ったが、ゲル複合体でも同様な結果が示されることを確認した。炭酸イオン混入対策検討も本年度の項目としていた。対策としては弱酸での処理も考えられたが、Mg/Al比に影響を与えてしまうため、乾燥法での対処を検討した。以上、予想と結果の相違に伴い、若干の計画修正はあったが、大筋で計画通りに進展しているため「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に沿い、平成29年度は、(1)複合材合成検討およびイオン選択性メカニズム解明の追加・継続と(2)他の高分子ゲルおよび基材を用いた複合材合成への展開を予定通り行う。(1)は平成28年度結果を踏まえて、アルカリ沈殿剤の種類が与える影響などについてさらなる継続検討を行う。(2)については応用範囲を広げるため、なるべく多くの材料を検討し、多様な展開を図る。
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