研究課題/領域番号 |
15K00616
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研究機関 | 富山国際大学 |
研究代表者 |
高橋 ゆかり 富山国際大学, 現代社会学部, 准教授 (00712689)
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研究分担者 |
雨谷 敬史 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 准教授 (10244534)
石倉 卓子 富山国際大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (90461855)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 子ども / ハウスダスト / 臭素系難燃剤 / 多環芳香族炭化水素 / アルデヒド / 曝露評価 / 行動特性の定量化 |
研究実績の概要 |
幼児の化学物質に対する感受性は成人と異なると考えられる。このため、幼児の健康に影響を及ぼすことが懸念される有害化学物質の存在実態を把握し、これをもとに幼児の身体特性や行動特性を考慮した化学物質の曝露評価やリスク評価方法を検討することを目的としている。 幼児の身体的特性や行動特性を把握するために、文献を収集するとともに、幼児の行動特性を把握するために富山県内の幼稚園と保育園各1か所において、自由遊び、集団での行動、食事などにおける幼児の行動を観察し、子どもの行動を評価することを試みた。 また、幼稚園、保育園の室内空気中の汚染物質の実態を把握するために、室内外空気中の汚染物質を採取し、試料に含まれる有害化学物質の分析を実施した。平成27年度は、カーテンやカーペットに由来するハウスダスト中の臭素系難燃剤、燃焼行為にともなって発生する空気浮遊粉塵中の多環芳香族炭化水素や塩化多環芳香族炭化水素(Cl-PAH)、および室内空気汚染物質であるアルデヒド類を対象とした。ハウスダストは掃除機を用いて採取し、室内外浮遊粉塵中の多環芳香族炭化水素(PAH)および塩化多環芳香族炭化水素(Cl-PAH)は小型のエアサンプラーを用いて1分間に1Lの流量で室内外の空気をガラス繊維フィルター上に捕集した。また、アルデヒド類は市販のパッシブサンプラーを用いて採取した。試料採取は、11月、12月および3月に実施し、現在、得られた試料中に含まれる分析対象物質の機器分析を行っている。得られた試料から、多環芳香族炭化水素類をはじめとしてヒトの健康に影響を及ぼす可能性のある化合物が検出されることを確認した。 平成28年度は、幼児の健康に影響を及ぼす可能性のある有害化学物質を特定し、より多くの幼稚園・保育園における調査を実施し、曝露評価のための基礎資料を得る予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
幼児の行動特性を把握するために子どもの行動を観察したが、幼児は数十秒ごとに活動を変えることや、ある特定の場所における化学物質との接触をどのように評価していくかということについて検討する必要がある。このため、幼児の行動の定量化が予定よりもやや遅れている。 室内環境中の化学物質の分析については、初年度は幼稚園においてどのように調査を進めていくか検討する時間も要したため、調査をした幼稚園・保育園は計2か所だけであった。平成28年度には、調査対象物質と調査方法を定め、多くの幼稚園・保育園で実態調査を実施したい。
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今後の研究の推進方策 |
今後も幼児の身体的特性や行動特性の把握に努め、化学物質への曝露評価のための基礎的なデータを取得する。幼児の身体的特性については、文献をもとに評価する。幼児の行動特性については、ビデオなど映像を記録できる装置を利用する。 富山県内や静岡県内の複数の幼稚園や保育園において有害化学物質の実態を把握するための調査を季節ごとに実施する。得られた結果から、子どもへの吸入曝露の可能性のある室内空気汚染物質を特定する。昨年度実施したハウスダスト、室内外浮遊粉塵、アルデヒドに加え、今年度は空中菌サンプラーを用いて室内空気中に浮遊するカビ類の室内外空気中の実態についても把握することとする。これにより、複数の幼稚園や保育園において幼児への曝露の可能性のある化学物質を対象として濃度の季節変動を把握する。また、これらの汚染物質の発生源を予測する。ハウスダスト中の化学物質の種類、量、毒性などのデータから、経口曝露、経皮曝露の可能性のある室内空気汚染物質を特定し、曝露評価のための資料とする。さらに、空気汚染物質が沈着する可能性や、ハウスダストから空気中へ再度飛散する可能性をはじめ、ハウスダストを経由した曝露の可能性について考察する。さらに、室内空気から沈着する化学物質や、一度沈着した化学物質が再度空気中に飛散する可能性を検討するために、文献調査や予備検討を実施する。 平成29年度も引き続き、化学物質の曝露評価のための調査を継続する。必要であれば、リスクが高いと考えられる化学物質を対象に、さらに詳細なデータを取得する。前年度までに得られた結果をもとに、子どもの特性や気候、室内の状況などを十分に考慮しながら、子どもの室内空気汚染物質への曝露評価を行い、リスク低減に向けてどのような対策が必要であるかを考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は、調査を実施したのが2か所の幼稚園や保育園に限られてしまったことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は、対象とする幼稚園・保育園の数や測定項目を増やして調査を実施する予定である。このため、試料採取のための掃除機やミニポンプ、粉塵計、また、実験室での分析のための機材を購入するために使用する。また、幼児の行動把握、試料採取および分析などのために研究補助者が必要であるため、人件費に使用する予定である。
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