研究課題/領域番号 |
15K00619
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研究機関 | 一般財団法人日本環境衛生センターアジア大気汚染研究センター |
研究代表者 |
大泉 毅 一般財団法人日本環境衛生センターアジア大気汚染研究センター, 情報管理部, 部長 (10450800)
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研究分担者 |
佐瀬 裕之 一般財団法人日本環境衛生センターアジア大気汚染研究センター, 生態影響研究部, 部長 (20450801)
武 直子 一般財団法人日本環境衛生センターアジア大気汚染研究センター, その他, 客員研究員 (00633679) [辞退]
高橋 司 一般財団法人日本環境衛生センターアジア大気汚染研究センター, 大気圏研究部, 研究員 (60782688)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 粒子状物質 / 越境大気汚染 / 公園・緑地 / 大気浄化 |
研究実績の概要 |
平成27年度から、樹木による大気中粒子状物質の除去機能に着目し、越境大気汚染が顕在化する日本海側の中核都市である新潟市において、公園・緑地、街路樹等による除去・浄化効果を評価することを目的としてフィールド研究を実施している。具体的には、都市公園内の緑地において粒子状物質を採取分析し、その樹木への乾性沈着量(除去量)を推計する(トップダウン推計)。また、同時期に粒子状物質の樹木への付着量(除去量)を推計する(ボトムアップ推計)。両推計値から、樹木による粒子状物質の除去・浄化作用をその不確実性と合わせて見積もる。さらに、これらの結果を関係行政部局と情報共有し、自治体レベルでの大気汚染対策への貢献を図ることを視野に研究を進めている。 新潟市中央区の南部に位置する都市公園である新潟県立鳥屋野潟公園内の樹木に囲まれた林床において、平成27年度から平成28年度に大気中の粒子状物質について、粒径別(PM2.5, PM2.5-10, PM10-)に一週間毎の連続採取を15月間継続実施し、質量、イオン成分等の濃度を測定した。また、同地点で降水中の粒子状物質を1月毎に採取し炭素濃度を測定した。対照地点として、公園から東南東へ約5km離れた新潟市亀田一般環境大気測定局において公園内と同様の観測を行い、両地点における観測データを比較・評価している。 また、公園内で採取した樹木葉から葉面付着物質を抽出し、炭素成分等の付着量を評価している。なお、今回の公園木を用いた調査は、新潟駅南口に伸びるケヤキ通りを想定し、ケヤキにも着目してその粒子捕捉機能を検討したが、鳥屋野潟公園等における観測結果では、落葉期においてはほとんど公園内外で粒子濃度に差が見られないことから、越境大気汚染や地域からの排出量が増大する冬季においては、ケヤキ並木は粒子捕捉フィルターとしてはほとんど機能しないと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新潟県及び新潟市の協力を得て、新潟県立公園内及び新潟市一般環境大気測定局を調査地として、平成27年12月から平成29年3月の間に採取した粒子状物質、降水、葉面沈着物の分析・評価を進め、これまでに以下の結果が得られている。①調査期間中の粒子状物質の大気濃度は、大粒径(>PM10):1.1-15.7μg/m3、中粒径(PMc、PM10とPM2.5の差分):1.9-21.6μg/m3、微小粒径(PM2.5):3.8-18.7μg/m3の範囲にあり、各粒径共に春季に高く夏季に低い季節変動を示した。②>PM10、PMc及びPM2.5の大気濃度は落葉期には公園内外の差はほとんどなかったが、着葉期には公園内の大気濃度が低下し、その割合は大粒径ほど顕著であることから、現状の公園樹木は大粒径の粒子状物質の大気濃度低減には一定の役割があるが、微小粒子への効果は限定的であると考えられた。③>PM10、PMcはPM2.5と異なった成分組成を示したが、いずれの粒径でも公園内外での成分組成に差異はなかった。④大気中粒子状物質の元素状炭素(EC)成分はバイオマス燃焼由来とされるChar-ECが大半であるが、大粒径ではディーゼル機関由来とされるSoot-ECの割合が比較的多かった。公園内での大気濃度低減も、大粒径のSoot-ECで顕著であった。⑤葉面に捕捉された粒子状物質のEC成分にはSoot-ECが多いことから、葉面の粒子状物質中のEC成分は、捕捉した大粒径の粒子状物質を反映していると考えられた。⑥降水中と大気中の粒子状物質のChar-EC/Soot-EC比から、3月以降の期間については降水がChar-ECよりSoot-ECを効率よく取り込む可能性のあることが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の当初計画では、年に数回のフィールド観測を予定していたが、地権者の承諾が得られ15月の連続観測が可能となったため、採取できた試料も多く、分析が3年目に集中し、また、採取試料の一部を用いて当初計画に加えてバイオマス燃焼に対する指標性が高いことが指摘されているレボグルコサン等の有機マーカーを分析することにしたため、研究期間の延長を申請し、平成30年度までの1年間の延長が認められている。平成30年度は、新たに加えた成分について分析を実施し、これまでに得られたデータと共に多角的な解析・評価を進め、研究成果を論文として学術雑誌に投稿・発表すると共に、樹木の有する粒子捕捉機能に係る研究成果を新潟県・新潟市の関係部局と共有し、実際の都市・公園計画に反映するための方策及び課題を検討することとしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画の一部変更により採取試料数及び分析成分の種類が増加したため、分析及びデータの解析・評価、研究論文執筆が平成29年度内に完了できず、そのための予算を次年度に繰り越した。当該予算は消耗品の購入費、論文執筆の費用に充てる予定である。
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