研究課題/領域番号 |
15K00623
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
石川 俊之 滋賀大学, 教育学部, 准教授 (50396313)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 湖沼生態系 / 底生生物 / 安定同位体比 / 湖底環境 / スジエビ / マクロベントス |
研究実績の概要 |
◆沿岸部と深底部の両方を利用する底生動物の安定同位体比による評価 本研究では湖底の食物網における光環境と底生動物の関係に焦点をあてているが,光環境が異なる生息域を行き来する生物としてスジエビに注目し,安定同位体による分析を行った。琵琶湖のスジエビは春から夏は繁殖場所である沿岸部に分布するが,秋から冬は深底部に分布するという特徴を持つ。沿岸部では底生藻類を起点として食物網になるが,深底部では光が十分届かないため沈降してきた植物プランクトンを起点とする食物網に属すると予測された。琵琶湖で複数の時期に異なる水深で採集されたスジエビの安定同位体比を測定した結果,この予想を支持する結果が得られた。なお,従来は冬季にはスジエビは摂食活動が低下するため深底部の餌はあまり重要でないと考えられていたが,本研究により深底部での餌利用の実態が明らかになったため,スジエビの季節移動について新しい見方,つまり餌を求めて移動するという説が浮かび上がったことを指摘しておく。 ◆底生動物の分布と底生藻類量の関係 琵琶湖北湖の南東部に広がる水深10m~20mの水域において,底生動物の分布と湖底堆積物上の藻類量の比較について野外調査を行った。調査ではエックマンバージ採泥器を用いマクロベントスを採集したほか、底泥試料の一部を用いて堆積物表層のクロロフィル量と灼熱減量、堆積物表面の光合成活性(Ft,Qy)を測定した。また、鉛直プロファイラーをい用いて湖底直上水の水温、溶存酸素、光量子量の測定をおこなった。測定ができたデータの中から相関関係がいくつか検出できたので代表的なものを列挙する。灼熱原料と二枚貝の個体数(負の相関)、堆積物表面と巻貝の個体数(正の相関)、貧毛類の個体数と粒度組成(細かいほど個体数大)、二枚貝の湿重量と底泥表面の光合成活性(正の相関)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
後述のとおり、器材の調達において当初の年度計画で予定していた調査の実施を次年度に実施することになったが、翌年度に予定した調査を前倒して進めることができた。 本研究をすすめる上で、立案段階では堆積物上の付着藻類量の評価が課題と考えられたが、導入した機器を用いてデータを得られている。得られたデータを用いて解析したところ研究の目的である底生動物と底生藻類量の関係についても野外データから有意な相関を得ることができ、研究の作業仮説を支持するデータが蓄積できている。
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今後の研究の推進方策 |
2016年度は当初2015年度に予定していた野外調査を実施するとともに、安定同位体比による食物網解析のための試料を採取し、化学分析を行う。 また、当該分野における国外での研究の発展について文献収集をさらにすすめ、和文誌に総説を投稿するための原稿の準備を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
野外調査に用いる予定であった光量子ロガーが,メーカーのモデルチェンジ時期にあたっており,旧モデルの在庫がないため新モデルを待つ必要があった。この新モデルの発売が遅れ野外調査に使用することが困難になったため次年度に調査に関する消耗品の購入を行うこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
光量子ロガー等を用いた季節変化の調査を2016年度に実施することにし,これに関連する消耗品の購入を2016年に行うこととした。購入物品は、照度センサーや水温センサーである。
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