2017年度に予定していた学会における成果発表の予定が、大学での職務と重複して実施できなかったため、実施期間を1年間延長し、2018年度に学会での成果発表を行うこととした。 2018年10月5日(金)~10月8日(月)に岡山大学にて開催された第83回日本陸水学会岡山大会にて、2件の口頭発表を行った。1件は、湖底の光環境の季節変化と湖底表面の藻類量についての解析結果をまとめたものである。もう1件は、水草の有無により湖底に生息する複数種のヨコエビ類の分布が季節的に変化する可能性を指摘したものである。 また、前年度までに実施した研究成果が2編の原著論文として掲載された。1件は、琵琶湖の明るい湖底と暗い湖底を移動するスジエビの栄養状態についての解析結果であり、安定同位体比、脂質量、DNA/RNA量比を用いて、明るい湖底と暗い湖底でのスジエビの餌の変化がみられること、琵琶湖では暗い湖底においても栄養状態が低下せず、餌資源が得られていることを指摘することができた。もう1件は、環境DNAを用いたスジエビの分布の解析結果を示したものである。これまで湖底の生物群集を解析する上で、採集方法がボトルネックになっており、特に採泥器で採集しずらい逃避行動や単位面積当たりの個体数が小さい「大きな」生物について、環境DNAによる解析が有効であることを示すことができた。本研究課題実施時には、大型の底生動物についてはこの2件の研究成果が到達点となったが、今後、採泥器で採集できるような「小さい」生物と同じように、湖底の生産性との関連を解析できる目途がついたといえる。
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