南西諸島の島嶼部における外来種陸産貝類(アフリカマイマイ、ウスカワマイマイ類、トクサオカチョウイガイ、コハクガイ)の侵入の現況調査、および、固有種陸産貝類相に与える影響の調査を行った。ウスカワマイマイ類に関してはmtDNAを用いた集団間の遺伝的変異に関して調査を行った。 外来種陸産貝類の生息は、どの地域も人家周辺や畑地等の人為的攪乱地に限定されており、固有種が多く生息する自然植生の地域にはあまり生息拡大はしていないことを確認した。特に、その傾向は、大型のアフリカマイマイで顕著であった。奄美大島において、道路脇から自然林に至る地域の生息密度を調査した結果、道路脇の植生攪乱地の密度が最も高く、自然林に入るに従って、その生息数は激減した。従って、自然林にはアフリカマイマイの生息を阻む何らかの原因があると推定されたが、その要因は不明であった。 ウスカワマイマイとパンダナマイマイは、各島嶼の個体群から採集した個体を用い、mtDNAの比較を行い、個体群間の遺伝的な違いを調査した。ウスカワマイマイは、日本固有種ではあるが、畑地や集落等の人為的攪乱地を好む種である。本来の生息地は河川敷などの自然植生攪乱地と推定される。九州南部から南西諸島にかけては、4亜種が生息するとされてきた。しかし、今回の研究の結果、4亜種はまったく分別不可能であることが解った。産地間の人為的移動が頻繁であるが、個体群間の移動に伴う遺伝的交流を考慮したとしても亜種に分割することは不可能であることが解った。固有種パンダナマイマイには、移入種オナジマイマイの遺伝子浸透が多少認められた。 本研究の結果、外来種陸産貝類は、予想していた程には、固有種相には影響を与えていないことが解った。しかし、一部の種で、外来種による遺伝子浸透が生じている可能性が示唆され、更に、この問題を精査する必要性がある。
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