研究課題/領域番号 |
15K00628
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
笹木 潤 東京農業大学, 生物産業学部, 准教授 (00339087)
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研究分担者 |
中澤 洋三 東京農業大学, 生物産業学部, 准教授 (20341828)
中川 至純 東京農業大学, 生物産業学部, 准教授 (70399111)
園田 武 東京農業大学, 生物産業学部, 助教 (70424679)
妙田 貴生 東京農業大学, 生物産業学部, 准教授 (80372986)
中村 隆俊 東京農業大学, 生物産業学部, 准教授 (80408658)
岩本 博幸 東京農業大学, 国際食料情報学部, 准教授 (90377127)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 生態系サービス |
研究実績の概要 |
湿地生態系機能の評価については、濤沸湖および藻琴湖内に設定した調査地点において魚類調査を実施した。生息種は回遊型・海水型・汽水型・淡水型が混在し両湖で類似性が高かった。魚類の生息空間としては両湖沼ともに様々な制限要因がある一方で、多様な魚類相が維持されていることがわかった。また、プランクトンの動態を把握するために、特にカキの餌料として重要であると考えられる植物プランクトンおよび微小動物プランクトンの採集方法を検討した。両湖の植物プランクトンの現存量は、水温の低下に伴って減少する傾向がみられ、秋季には中型のプランクトンが優占することが分かった。また、河川の影響が強い場所では、小型の植物プランクトンの現存量が高くなることが分かった。一方、湖岸植生による栄養塩の吸収速度を評価した。濤沸湖畔南岸中央部にモデル調査区を設定し、ヨシ群落を対象とした地上部刈り取り調査および窒素分析を行った。これらの調査・分析を通じて、草丈による地上部重量推定式を作成するとともに、地上部窒素濃度から年間・単位面積あたりの窒素吸収量を算出した。また、植物遺体の分解に伴う栄養塩放出速度を把握するために、ヨシ地上部の枯死個体を入れたナイロンネットを調査区の地表面に設置し現地分解試験を開始した。 水産物の食品特性評価については、濤沸湖および藻琴湖の牡蠣およびシジミを入手し、産地による食品特性を把握するため、身の重量とサイズおよびミネラル量に差異が生じていることを解析した。 湿地生態系サービスの経済的価値評価については、既存の価値評価方法のサーベイを進めた。また、観光客を対象に調査対象地の認知度と保全意識を調べるための調査票調査を実施し、生態系の知識を持つ観光客ほど生態系サービスを高く評価していることを示す結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
河川の水質調査は悪天候もあり予定していた検査を実施できなかったものの、他の項目については、研究計画調書に記載した研究内容が実施できた。また、湿地生態系の文化的サービスに関しては、観光客を対象としたアンケート調査を実施するなど当初の計画以上に進展できた分野もあった。本研究はおおむね予定通り進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
周辺土地利用に起因する栄養塩流入特性と生態系構造の評価として、今年度実施できなかった対象湿原へ流入する河川の水質調査を実施し栄養塩類を分析する。 湿地生態系機能の評価については、濤沸湖よび藻琴湖の魚介類の食物網構造の全体像把握を目標として、魚類及び底生動物、動物プランクトンと環境質に関する調査を継続する。また、両湖沼に設置した水質計と採水器によって採取したデータにより湖内の水塊構造と栄養塩類の時空間的変動の解明を試みる。湿生植物については、両湖沼に分布するヨシ群落を対象に地上部重量調査を多地点で行う。この調査結果と本年度に実施したヨシ刈り取りサンプルについてのリン濃度分析および本年度推定した地上部重量式を用いて年間・単位面積あたりの窒素吸収量を各地点で算出を試みる。 水産物の食品特性評価については、新たな水産資源を本研究に適用できるか検討すると共に、今年度の試料対象とした牡蠣およびシジミの成分分析として、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による旨味成分(アミノ酸, 核酸)の定性定量分析、定量的記述分析(QDA)法による官能評価、および味覚センサー(αASTREE)による味分析を実施して食品的価値の評価を試みる。 湿地生態系サービスの経済的価値評価については、本年度実施した調査票調査の分析と考察を進めるとともに湖沼生態系と生活の影響を探るために漁家、農家などの関係者および関係機関への聞き取り調査を実施する。また、上記の自然科学の研究成果と進捗状況を踏まえ、湿地生態系サービスの定量的評価手法について検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
河川の水質調査を実施予定であったが、調査日の悪天候とそれにともなう調査器材手配の調整が不調で採水サンプルをほとんど得られず、水質分析委託費用として使用する予定の予算残高が生じた。 また、実験対象のワカサギ、牡蠣およびシジミ等の漁獲が平成27年10月末から11月上旬となり、当初予定していた実験開始期が遅延したため支出額が少なくなってしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度実施できなかった河川の水質調査は、天候悪化にも対応できるように柔軟な調査実施ができるようスケジュールして当初の計画通り実施するため、未使用額はその経費に充てたい。 また、実験対象のワカサギ、牡蠣およびシジミ等については昨年度確保し適切に保存しているため、当初予定してた実験を行うための試料費として本年度に計上したい。
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