研究課題/領域番号 |
15K00633
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
吉野 純 岐阜大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70377688)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 風力 / 再生可能エネルギー / 環境技術 / 水工水理学 / 気象学 |
研究実績の概要 |
本研究開発では,これまでの風況予測技術において盲点となっていた河川域に卓越する“河川風”に着目して,特に近年低コスト化が進む“小型風力発電”を導入することを想定することで,河川風を利用した小型風力発電の導入可能性を理論的考察・現地観測・数値計算により検討し,その発電量評価技術を確立することを目的とするものである. 平成27年度の研究開発では,まず,斜面下降風と斜面上昇風についての理論的考察を行った.いずれも,無限遠の斜面を有する2次元断面を仮定することで定常解および非定常解を導き,斜面下降風については,1) 傾斜が急で,2) 地表面が冷たく,3) 摩擦が小さく,4) 河川長が長いほど発達し,一方で,斜面上昇風については,1) 斜面が緩やかで,2) 地表面が熱く,3) 摩擦が小さく,4) 成層が不安定であるほど発達しやすいことが明らかとなった. また,今年度の夏季には河川直上の風の構造を計測するため,岐阜市長良川の忠節橋上にて3日間(8月6日,同25日,同28日)の集中観測を実施した.そのうちの1日は,比較的発達した河川上昇風を観測し,堤外地の風速は堤内地の風速に比べて2.5倍にも達していた.また,よく晴れた夏季においては堤外地の気温は堤内地の気温に比べて3~7℃程度低いことが明らかとなった.適切な条件パラメータ設定を行うことで,理論値と観測値を比較したところ,定常解では過大評価の傾向にあったが,非定常解では観測値との比較的良い一致を示した. 更に,河川風を表現できる2次元断面の工学モデルを構築することで,傾斜する河川上における理論でも予測された現実的な斜面下降風の発達を再現することに成功している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成27年度の研究開発は,主として,「(1) 河川風に関する理論的考察」と「(2) 河川風の現地観測」を計画していたが,いずれも順調に実施することができた.また,平成28年度に実施予定であった,「(3) 河川風を表現できる新しい工学モデルの構築」を前倒しで実施できたことから,「(1) 当初の計画以上に進捗している」と自己評価した.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度には,予定通り「(3) 河川風を表現できる新しい工学モデルの構築」および「(4) 河川風の2次元/3次元シミュレーションと精度検証」を実施する予定である.平成27年度に実施した「(1) 河川風に関する理論的考察」と「(2) 河川風の現地観測」の知見に基づいた数値シミュレーションを行うことで,河川風の強まりやすい箇所の再検討を引き続き行っていく予定である. 平成27年度には斜面上昇風の観測には成功しているが,依然として斜面下降風の観測には至っていないため,平成28年度も引き続き,特に,斜面下降風をねらった現地観測を岐阜県内の河川上流域において実施する予定である.また,余力があれば,岐阜県内の河川下流域においても現地観測を実施することで,小型風力発電の設置により適したより強い斜面上昇風が卓越する箇所を見出したい.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は観測を中心に直接経費を使用した.当初は複数箇所での風速観測のためにもう1台分の風速計を計上していたが,共同研究先の企業より風速計を借り受けることができた.そのため,当初の計画を変更して風速計の購入を見合わせた.そのために平成28年度への使用額が発生した.
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度には,繰り越した経費を利用して再度の観測を実施する予定である.これは当初予定されていなかった観測であり,より良い観測データが得られるものと期待される.
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備考 |
大学初で唯一の気象予報サイト
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