研究実績の概要 |
本研究開発は,これまでの風力発電分野において盲点となっていた河川域に卓越する”河川風”と近年低コスト化が進む”小型風力発電”に着目して,河川風を利用した小型風力発電の導入可能性を理論・現地観測・数値解析により検討し,その発電量評価技術を確立することを目的とするものである. 平成29年度の研究開発では,岐阜県下呂市萩原において観測された夜間の斜面下降風や日中の斜面上昇風に対して,気象モデルに基づく高分解能な再現数値実験を実施した.その結果,萩原付近において見られたような斜面下降風と斜面上昇風を再現することに成功し,その風速値は現地観測とよい一致を示した.また,3次元のLES(Large Eddy Simulation)モデルを開発し,傾斜面上の河川周辺の詳細な気流解析を行ったところ,陸面と水面の粗度差に起因して河川直上の高度10m付近に局所的な風速ピークが形成されることが明らかとなり,現地観測と無矛盾な結果を得ることができた. また,これまでに得られた結果に基づいて,荻原の河川直上における小型風力発電による年間期待発電量を評価したところ,1年辺りの発電量は,飛騨川の堤内地では5,729kWh,堤外地では11,710kWhとなった.売電価格を55円/kWhとすると,堤内地では863円/日,堤外地では1,765円/日となった.つまり,堤外地と堤内地とでは2倍以上の発電量(売電価格)差が生じる試算となった.以上の結果より,斜面下降風や斜面上昇風が発達する萩原のような山間地では,河川風を利用することにより小型風力発電の導入可能性は極めて高いことが明らかとなった.
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