研究課題/領域番号 |
15K00634
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
森塚 直樹 京都大学, 農学研究科, 助教 (10554975)
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研究分担者 |
松岡 かおり 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹茶業研究部門, 契約研究員・外部研究員等 (10720774)
桂 圭佑 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (20432338)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | 水田土壌 / 飼料イネ連作 / 帯磁率 / 定点調査 / 圃場群スケール |
研究実績の概要 |
H28年度の主な知見は以下の通りである。 1)裏作のコムギの生育量を5月中旬に評価した。2014年から継続してきた定点調査圃場(8圃場・39地点)のコムギの穂重は、61~389 kg/10aと大きく変動した。調査時の作土の水分含量と5%有意な負の相関を示したことから、湿害の影響が示唆された。また9月には灌漑水と田面水を採取するとともに、10月には食用米(ヒノヒカリ)と飼料イネ(ミナミユタカ)の生育調査を実施した。 2)1月上旬に土壌表面の帯磁率を定点調査圃場の39地点で測定した結果、現場測定値は、2.42~8.86 ×10-3 SIと大きく変動した。5月中旬に採取した作土の室内測定値(2.08~7.65 ×10-3 SI)よりも少し高い値を示したが、両者はきわめてよく対応した(r2 = 0.96)。さらに作土の帯磁率(室内測定)は、砂含量(r = 0.88)、熱硝酸可溶性非交換態カリウム(K)含量(r = 0.67)、K飽和度(r = 0.66)と1%有意な正の相関を示した。適用可能条件は不明だが、調査地域における土壌表面の帯磁率の現場測定は、作土の特性値、特に砂含量の迅速簡易評価として有効になりうることが示唆された。 3)定点調査圃場の一つの飼料イネ連作水田の作土と京都大学附属高槻農場の無施肥水田の作土を用いて、蒸留水潅水によるN・K・Siの欠如試験を行った。K飽和度は両土壌ともに2%前後であった。ヒノヒカリとミナミユタカをポット栽培した結果、高槻土壌ではK欠如区の地上部風乾重が最も小さくなったのに対して、御船土壌ではN欠如区とK欠如区の地上部乾物重がほぼ等しく減少した。上記の2つ目の結果と合わせて解釈すると、御船土壌では、飼料イネの連作によって作土の交換態K含量は低下したが、土壌の砂画分に含まれているK含有鉱物が交換態画分を補充する給源となっていたことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
土壌の帯磁率測定に関する実験が大きく進展した。さらに上記の野外調査やポット試験に加えて、文献調査も実施した。生産者が実践できる土壌診断法である色と砂含量の評価法について取りまとめた。さらに作物収量と土壌肥沃度を改善できる土壌管理の一つとして、下水汚泥などの有機性廃棄物の窒素の肥料効果が熱処理によってどのように変化するかを文献調査した。
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今後の研究の推進方策 |
1)定点調査圃場における土壌表面の帯磁率測定によって得られた知見の適用可能範囲を明らかにするために、異なる地目や土壌種の耕地を対象として、さらに現場測定と土壌分析を行う。 2)過酸化水素処理後の電気伝導度測定による水田土壌の全窒素含量の推定に関して、圃場群スケールでの事例をさらに集積させる。熊本県の北部には、全国的には珍しい黒ボク土水田が広く分布していることから、本手法がそのような圃場群でも適用できるかどうかを評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査旅費を定額にして節約したため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
学会発表や現地調査のための旅費に使用する。
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