研究実績の概要 |
H30年度には、主に以下の知見が得られた。 1)2018年5月中旬に定点水田圃場(39地点)から表層土壌試料を採取し、理化学性を分析した。既存の土壌分析結果と合わせて評価した結果、2014→2016→2018年の表層土壌特性値の飼料イネ水田/食用米水田比は、低い順に交換態K(0.54→0.54→0.28)、熱硝酸K(0.69→0.66→0.61)、可給態Si(0.73→0.72→0.69)、可給態N(0.80→0.84→0.76)、可給態P(0.80→0.79→0.77)となった。全Cと全Nは0.9~1.0で推移していた。さらに2018年に採取した土壌試料を用いてヒノヒカリを蒸留水潅水で無施肥栽培した結果、地上部乾物重と土壌特性値との相関係数は、0.85(可給態N)、0.74(交換態K)、0.72(可給態Si)となった。 2)2018年10月に定点水田圃場(39地点)から水稲試料を採取し、圃場からの元素の持ち出し量を計算した。N, P, K, Siについて元素収支を計算した結果、食用米栽培ではいずれの元素も収支が正になったのに対して、飼料イネ栽培ではいずれの元素も負の収支となり、特にカリウムとケイ素の収支は大幅に負の値(<-10 g m-2)となった。 3)地面の帯磁率測定値は、帯磁率計のセンサーと試料との接触程度によって値が増減しうるが、土壌水分含量の影響をほとんど受けないことを確認した。この結果を踏まえて、2018年11月と2019年5月に定点圃場のうち2圃場の帯磁率をくまなく測定した。さらに2019年1月には定点調査圃場の周辺圃場も含む128圃場で地面の帯磁率を測定し、より広域な範囲での測定を行った。いずれの測定でも地面の帯磁率は大きな空間変動と高い空間依存性を示し、高精度かつ高解像度のマッピングが可能であることが示唆された。土壌の帯磁率規定要因をさらに調べる予定である。
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