本研究は、実海域での実験が開始された海洋温度差発電の複合利用の一つとして今後期待されている海水淡水化装置の新しい熱交換器材料の開発を目的としたものである。3年の研究期間において、海水淡水化装置の凝縮器に新たに作成したアルミ合金製のプレートを組み込むことで、凝縮伝熱性能と腐食に関する評価を行った。 その中で、本年度は「海水淡水化装置用プレート式凝縮器の凝縮熱伝達の測定」と「海洋表層水および深層水を用いた淡水化装置における凝縮器の伝熱性能測定」を実行した。 「海水淡水化装置用プレート式凝縮器の凝縮熱伝達の測定」では伊万里サテライトで水道水を原水とした凝縮実験を行った。昨年度行った淡水化装置における凝縮実験では、水道水に含まれる酸素や窒素などの不凝縮性ガスが凝縮熱伝達に影響を与えていたため、本年度はそれらを脱気することで不凝縮性ガスを伴わない水蒸気を用いた。フラッシュチャンバー容器に加熱用ヒーターを追加することで脱気及び水蒸気の発生が可能なボイラーとして使用できるように改良を施し、そのボイラーで発生させた水蒸気を用いて凝縮器で熱通過率および凝縮熱伝達率の測定を行ない、伝熱性能を評価した。また実験で用いたテストプレートはPEEK樹脂 (25μm膜厚) 、 WINKOTE (5μm膜厚)と市販のチタンプレートの3種類であり、プレートの種類による伝熱性能の比較を行った。 次に、「海洋表層水および深層水を用いた淡水化装置における凝縮器の伝熱性能測定」では昨年度に引き続き海洋表層水、深層水が得られる久米島サテライトで行った。前述の実験同様、熱通過率および凝縮熱伝達率の測定を行なった。実験に用いたプレートはPEEK樹脂 (25μm膜厚および100μm膜厚) 、WINKOTE (5μm膜厚)、市販のチタンプレートの4種類である。同時に、淡水化装置の性能を示す指標である淡水化率の比較も行った。
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