研究実績の概要 |
本研究は、藍藻(シアノバクテリア)と紅色光合成細菌を利用して光生物学的に水素を海面上で生産することを最終目標として、そのシステム開発の基盤となる技術開発を行うことを目的として研究を行い、次のような成果を得た。 ① β-プロテオバクテリアに属する紅色光合成細菌であるRubrivivax gelatinosus IL144株の取り込み型ヒドロゲナーぜHupの遺伝子破壊株を作成し、培地組成など生育条件を検討し、野生株に対して、30%程度水素生産活性が増大することを明らかにした。 ② シアノバクテリアは、光合成色素としてクロロフィル a を持ち、光合成に利用できる光(PAR, Photosynthetically Active Radiation) は可視域の光(400-700 nm)である。一方、紅色光合成細菌は光合成色素としてバクテリオクロロフィル a を持ち可視光に加えて 700-900 nm の赤外光も利用できる。シアノバクテリア培養液を入れたフラスコの下に紅色光合成細菌 R. gelatinosus を入れたフラスコを置くことにより、太陽エネルギー変換効率は、受光面の単位面積当たりの水素生産量として、シアノバクテリアの培養層を二つ重ねた時と比べ2.7倍近く増大した。 ③ 水素低透過性プラスチック素材を用いてフロート型バイオリアクターのプロトタイプを作製した。実際に、シアノバクテリアNostoc sp. PCC 7422のHup不活株や紅色光合成細菌R. gelatinosus IL144のHup破壊株をその内部に入れ、海水と同じ比重を持つ硫酸マグネシウム溶液の水面にバイオリアクターを浮かべて太陽光模擬照射装置で光照射し、内部に水素が蓄積することを確認した。
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