研究課題/領域番号 |
15K00648
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
佐藤 修 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 化学プロセス研究部門, 主任研究員 (20357148)
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研究分担者 |
増田 善雄 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 化学プロセス研究部門, 主任研究員 (10358004)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | フルフラール合成 / 固体酸触媒 / 高温水 / 超臨界二酸化炭素 |
研究実績の概要 |
本研究では、水‐超臨界二酸化炭素の二相反応系内で実バイオマスを固体酸触媒で処理する、環境調和型のヘミセルロース‐フルフラール変換プロセスの開発を最終目的としており、初年度の平成27年度は、1)キシロース等の五炭糖類を高効率でフルフラール変換する固体酸触媒の選定と、2)温度、圧力、二酸化炭素流量、サンプルおよび触媒量等の反応条件と反応変換効率、生成物収率との関係解明に重点を置いた。 1)の検討課題では、スルホン酸基を有する耐熱性樹脂であるAmberlyst70(強酸型イオン交換樹脂)およびNafion(パーフルオロカーボン)、各種H型セオライト(ZSM‐5、モルデナイト、Y型、CHA型(Y型よりゼオライト転換法により合成)を用いて、熱水中でのキシロース変換反応(150℃、8時間)を試みたところ、Amberlyst70、モルデナイト、CHA型が無触媒条件と比べてフルフラール収率、選択率ともに向上させた。また、シリカ/アルミナ比を変えた検討から、シリカ/アルミナ比が小さい、すなわち酸点が多いほど、フルフラール収率は増加する傾向にあるものの、イオン交換率が高くNH3-TDPで大きな値を示すY型では、選択率の低下が見られた。現段階では、酸点の多い固体酸添加時には、キシロース-フルフラール変換反応だけでなく、生成したフルフラール等の二次分解反応を同時に促進しているものと考えている。 2)の課題については、1)で収率、選択率とも良好な結果を示したAmberlyst70を用いて検討を行ったところ、170℃、20MPa、二酸化炭素流通量0.94g/minの条件下でフルフラール収率は55.2%に達した。これは水/トルエン系2層系の45.2%を大きく上回るもので、生成するフルフラールを連続的に系外に抽出する水-二酸化炭素系は固体触媒を併用する反応系として有効であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に示したとおり、おおむね計画通りに研究は進んでいる。ただ、当初はとうもろこし(穂軸)を処理対象とした高温水-二酸化炭素二相系での実バイオマスの変換反応についても昨年度後半には検討を開始する予定であったが、とうもろこし試料を早期に入手することができなかったため、現在他の実サンプル試料(杉、ユーカリ、竹)とともに組成分析(セルロース・ヘミセルロース・リグニン比)を進めている段階である。そこで予定を変更し、ヘミセルロース(試薬)を用いて高温水-二酸化炭素二相中での変換反応を行い、加水分解を含めたフルフラール生成に対する触媒・二酸化炭素の影響についての検討を先行させることにした。 また同時に固体酸触媒の検討の際、特に選択率の高かったCHA型ゼオライトについては、竹を処理処理対象とした比較実験を先行・着手させた(水/トルエン系2層系)。
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今後の研究の推進方策 |
1)実バイオマスを用いたヘミセルロース変換反応の検討・・・進歩状況に記載したとおり、まずヘミセルロース(試薬)を用いた高温水-二酸化炭素二相中での変換反応の検討を行い、フルフラール収率および抽出率が最大となる、最適反応条件(温度、圧力、二酸化炭素流量)を見出す。次いでこの条件を基に、個々のバイオマス(とうもろこし、杉、ユーカリ、竹)の最適化を図る。 2)セルロース変換用前処理プロセスとして最適化・・・各種実バイオマスの反応処理後に得られる高セルロース含有残渣を回収し、セルラーゼ酵素処理による糖化反応を行う。実験には市販のセルラーゼを用い、分離した残渣を一般的なpH5.0 酢酸バッファー溶液中で48 時間恒温振盪処理する。今年度の前半には、この検討に必要な振盪恒温水槽を購入し、合わせてHPLCの生成糖類量測定条件を早期に確立しておく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究遂行上不可欠な本科研費専用にカスタマイズしたGCが故障・急遽修理が必要となった。このため、本年度購入した設備備品(撹拌翼付き小型オートクレーブ)の仕様見直しと、LCおよびGC分析用カラムや実験装置の組み立てに使用する配管継ぎ手などは極力手持ちのものを工夫して使用するなどして消耗品費の節約に大いに努めた。結果、約15万円の次年度繰り越しが生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度(平成28年度)は、反応対象をキシロース(試薬:単糖)から実バイオマス類(とうもろこし穂軸・木粉(ユーカリ・杉など)に拡張する。これに伴って生成する糖関連物質の多様化と混入する夾雑物によるカラム汚染が懸念される。このため繰り越し金は消耗品費に充当し、新規糖分析カラムとカラム保護用のガードカラム購入に使用する予定である。
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