研究課題/領域番号 |
15K00649
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
大田 ゆかり 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋生命理工学研究開発センター, 主任技術研究員 (40399572)
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研究分担者 |
秦田 勇二 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋生命理工学研究開発センター, グループリーダー (20399562)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | リグニン / バイオマス利活用 / 海洋性細菌 / グルタチオン転移酵素 / β-O-4結合 |
研究実績の概要 |
リグニンは、セルロースに次いで2番目に多いバイオマスであり、再生可能原料を活用した循環型社会構築のために有効利用が求められている。リグニンは数種類の芳香族化合物が主にβ-O-4結合で重合した物質であり、β-O-4結合を選択的に切断する酵素の開発がリグニン有効利用への大きな鍵となる。我々はこれまでに、β-O-4結合を切断する微生物を深海沈木より発見し、本微生物の持つβ-O-4結合特異的切断酵素群を取得することに成功している。 本課題では、各酵素の特性解析、高生産法検討、反応機構解析を行う。得られた知見を統合し、C6-C3構造を基本骨格とする新規機能性バイオプラスチック原料にもなる新しいプラットホーム芳香族モノマー化合物を、リグニンから高効率でバイオ生産する系をデザインすることを目的としている。 2015年度には、4種の光学異性体として存在するリグニンモデル2量体中のモノマー間β-O-4結合を特異的に切断するための3段階カスケード反応に必要な酵素6種の組換え生産条件を検討し、得られた酵素を用いた反応解析を行った。特に、4つの酵素(short-chain dehydrogenase/reductase 2種およびGlutathione S-transferase 2種)については、グアヤシル核を構成単位とするリグニンモデル2量体を基質として用いて、最適反応温度、pH、速度論的パラメーターを決定し論文発表した。これらの酵素解析例は、世界的にも報告例が少なく、リグニン内β-O-4結合を特異的に切断する分子機構を理解するための基盤として重要な知見を発信することができた。 また一方で、Glutathione S-transferase 1種については立体構造解析解明に向けて、結晶化条件検討も開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2015年度実施計画を早期に実施することができた。研究実施により、これまで未解明であった一部の反応中間体からの脱グルタチオン反応を触媒する、新しい反応機構を持つことが示唆される酵素の発見・機能同定を含む成果が得られている。この酵素の発見により、これまで不完全であった2量体からモノマーへの完全変換を世界で初めて再構築できたことは特筆に値する。2016年度に実施予定の項目に関しても、一部の予備的検討を既に開始できている。
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今後の研究の推進方策 |
取得同定した酵素の基質認識機構を明らかにするため、構造の異なるリグニンモデル化合物を用いた酵素化学的解析を行うと共に、天然抽出リグニンを基質とした場合の反応生成物解析を行う。 現在、結晶化条件を検討中の酵素1種については、更なる結晶化条件最適化を進め、立体構造解明へと繋げる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2015年に行う酵素生化学解析では、スループットや定量性の高い小スケール反応・分析条件を確立できたため、効率的な実験遂行が可能であり、試薬消耗品の購入額を安価に抑えることができた。
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次年度使用額の使用計画 |
2016年度にはさらに研究を加速するため、実験補助員の新規雇用を行い、結晶構造解析に必要な酵素タンパクの大量生成に必要なマンパワーを充実させる。
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