研究課題/領域番号 |
15K00660
|
研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
三宅 博之 北九州市立大学, 法学部, 教授 (60211596)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | バングラデシュ / ダカ / 廃棄物管理 / 有価廃棄物回収人 / 児童労働 / インドネシア / ゴミ銀行 / 社会配慮 |
研究実績の概要 |
途上国の適切な廃棄物管理を考えるにあたり、社会配慮的側面の研究は軽視できない。そこには清掃人への差別・蔑視の撤廃、有価廃棄物回収人(児童)と貧困、地域社会内廃棄物管理をめぐるガバナンス及び環境教育が含まれる。 今年度は、有価廃棄物回収人(児童)に焦点をあて、現場の調査地を南ダカ市の3か所(ジュライン地区、コムラプル地区、ドルプル地区)に設定、道路上で有価廃棄物を探している児童を対象に120名ほどにアンケート調査を予定通り9月に行った。物価上昇率が激しいせいか、8年前に行った聴き取り調査の廃棄物価格をはるかに上回っており、よって、有価廃棄物回収児童の収入も高かった。中には路上暮らしの児童もいた。前記二つの地区では学校に通っていない児童が大半を占め、最後の地区(ドルプル地区)ではNGO運営の学校があるためか、数多くの児童が通学していた。非就学児童と比べ、就学している児童は、収入は少ないものの、学校で教えられ、集団行動をっとっているせいか、自らの行為や振る舞いに自信を持っていた。現在、アンケート調査で得られたデータの打ち込みが終了し、その分析を行っている。 他方で、ダカの廃棄物管理の状況・位置を途上国全般の中で捉えるために、3月にはインドネシアのバンドンとスラバヤを訪れ、地域内での有価廃棄物回収銀行(通称Garbage Bank)の現状と有価廃棄物回収人(インドネシアでは同業に携わる児童はバングラデシュに比べ極端に少ない)の仕事状況の把握に努めた。ここでは中央政府が推奨している地域内ゴミ銀行とスラバヤ市が展開する大規模コンポスト事業が将来的に対立する可能性を垣間見た。このインドネシアの状況は、本研究をまとめる際に非常に役に立つと考える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の目標は、現地でのアンケート調査や聞き取り調査を通してダカの有価廃棄物回収児童の現状を把握することであった。途上国においても児童労働の禁止が急がれる中、路上で活動する児童を探し出し、アンケート調査を行うのは容易ではないと考えていたが、若干の日数の延長を見ながらも、同行の調査協力者の努力によって可能となった。 当初の計画では、インドネシアは訪問国に含まれていなかったが、南アジアの国々以外に、経済構造や成長が同じような国を対象して比較する重要性を知ったため、インドネシアの訪問に踏み切った。リサイクルを推進するにあたっての政府の方針と市役所の方針に多少の違いがみられ、これは本研究のテーマに対して全体をまとめる際にかなり興味深い情報を提供してくれる。現在、ダカでのアンケート調査のデータ分析を行うと同時に、聴き取り調査の整理も終えた状況である。
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、社会配慮的側面の重要な要素である清掃人の労働・生活環境、彼らへの偏見意識の調査を行いたい。 具体的には、8月にバングラデシュのダカにて以前調査を行った清掃人コロニーにてアンケート調査と聞き取り調査を実施する。さらに、12月には、インドの西ベンガル州のコルカタ、シッキム州に出かけ、同時に有価廃棄物女性収集人がNGOを作り、市役所との契約を結び市の清掃労働を担う(清掃人となった)役割を果たすといった非常に興味深い事例を提供しているマハラシュトラ州プネを訪問し、廃棄物管理における先進的な取組み事例の観察調査及び聴き取り調査を行いたい。その際に、日本では入手しにくい文献・資料を収集する予定である。以前、行ったアンケート調査の結果と比較し、分析を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
きちんと使い切ることができず、7109円といった額の資金が残ってしまった。3月に出かけたインドネシアの旅費(3月16日~24日)総額を計算するのに多少時間がかかり、同額が残った次第である。
|
次年度使用額の使用計画 |
同額については、次年度のバングラデシュのダカでのアンケート調査にかなり時間がかかりそうなので、人件費・謝金の中に組み込む予定である。
|