研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本における環境問題報道の現状と受容のされ方を明らかにし、受け手の環境保全行動促進に寄与する環境問題報道のあり方を検討することであった。そこでまず(1)環境問題のメディアフレームと日本人の環境観・自然観に関する文献研究を行った。次に(2)地球環境問題に関するCOP21開催中の環境問題報道のテレビニュースおよび新聞記事の内容分析を行い、報道のフレーム、環境配慮行動促進の規定因の有無などについて明らかにした。そして (3)深層面接法による少数のサンプルへのインタビューと(4) 全国の10歳代~70歳代の一般サンプル3,156名に対するインターネット調査を行い、環境観、自然観や環境問題報道への接触などを探った。 結果は次の通りである。まずテレビニュースの内容分析では、環境問題報道の量は少なく、行動意図に影響を与える情報も少なかった。また新聞の内容分析では、テレビニュースより環境問題の報道量が多かったが、主に政治的な対立フレーム、共存フレームでの報道が行われていた。インタビューの結果、若者は環境問題に対する関心が低く、その自然観には情緒的なイメージや言及が多く、科学的な知識や視点があまり見られなかった。また、自然に神秘感を感じ、人間がコントロールできない対象であると考えていた。一般サンプル調査の結果では、年齢が高いほど、またマスメディアでの環境報道を意識している人ほど、自然を維持するには手を加えるべきと答える傾向があった。また、年齢が若いほど環境よりも経済や快適な生活を優先する傾向が見られた。 以上の結果、今後の環境問題報道においては、まずその報道量を増やし、対立や共存フレームなどの政治的な報道ばかりでなく科学的フレームを用いて受け手の環境問題への認知的な理解を促し、また自然への畏敬の念を高めて環境配慮行動を促進することが重要であることが明らかになった。
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