私有地や共有地等について、一定の条件の下、オープン・アクセスにすることで、新たな意義を与え、持続可能な形での利用を進める取り組みが各地で行われている。本研究では、様々な取り組みの中でも、各国で行われているフットパスやトレイルに着目し、その実態を明らかにしつつ、アクセス権制度のあり方について検討している。 研究実施計画に基づき、日本国内のフットパス・トレイルの現地調査を重ねると共に、東アジアやニュージーランド、アメリカにおいても現地調査を実施した。日本では、特に北海道と九州においてフットパス・トレイルの整備が進んでいるが、北海道は「歩く」こと自体を重要視した整備、一方で九州はイングランドのWaW(Walkers are Welcome)と提携しつつ「地域活性化」を重要視した整備を行っており、方向性の違いがある。これは、イングランドにおける歩く権利の獲得とその維持に尽力してきたランブラーズとWaWの活動方針の違いに似たところがある。国外の動向を把握し、日本の状況と比較するために、ランナーやバイカー向けのトレイルの整備が進みつつあるニュージーランド、都市近郊でのトレイル整備が進んでいる台湾やシンガポールでの調査も実施した。特に東アジアでのフットパスやトレイルの整備は、当初想定していたよりも進んでいたが、公道を中心に設置され、私有地に関して調査は不十分であるがカナダと同じく親切な許可形式によるオープン・アクセス化を行っているようである。 イングランドや北欧諸国に見られる法律によってアクセス権を規定する形は、現時点では「歩く」ことがまだ活発とは言い難い日本では時期尚早であると言える。しかし、コモンズ研究においては資源の過少利用問題が注目されるようになり、日本の排他的な土地所有権制度の問題点も指摘されつつあり、日本的なアクセス権制度のあり方の議論を進める土壌はできつつある。
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