研究最終年度では、これまでに得られた成果を整理・分析し、客観的で意思決定過程などの透明性の高い指標や環境政策への適用の可能性について研究を行った。 まず初年度と次年度の福島事故後の原子力安全規制の国際比較を通した研究の結果を整理し、いくつかの重要な視点の存在を得た。一つは費用便益分析の必要性、もう一つは科学的根拠に基づく原子力・エネルギー政策の必要性である。 前者は、原子力安全規制においては制度、技術に関わらず新規の導入や改良が行われる場合、費用便益分析を用いた手法により定量的にその効果を示し、同時にその意思決定過程プロセスを明らかにすることで第三者による意思決定の追跡を可能となる。さらに日本が導入をしていない安全目標についても、その正式な導入を図るための意義や重要性を与えるものとなり得ると考えられる。 後者は、知見や経験の少ない原子力安全規制体制を補完し、科学的妥当性のないエネルギー政策からの影響を下げることが可能になる。福島事故の近因としては、東日本大震災としての地震と津波が挙げられる。しかしながら遠因としては、過去の国内の原子力事故(もんじゅ事故、東海再処理事故、JCO臨界事故等)と同様の、性急で科学的妥当性のない核燃料サイクル政策、エネルギー政策が安全性に影響を与えている事実が挙げられる。その解決として科学的根拠に基づく原子力・エネルギー政策を構築していくことが考えられる。 これら2つの重要な視点を応用して新たな原子力安全指標として提示し、または環境政策の一つとして組み込むという目的について、前者については現在、六ヶ所再処理工場の稼働問題を対象とした論文で完成予定である。後者についても現在準備中の論文および書籍で報告を予定している。
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