研究課題/領域番号 |
15K00667
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
小杉 隆信 立命館大学, 政策科学部, 教授 (30273725)
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研究分担者 |
小幡 範雄 立命館大学, 政策科学部, 教授 (70224300)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | エネルギー・環境システム / 技術政策分析 / サステイナビリティ |
研究実績の概要 |
実施1~2年目に得られた知見を受けて、3年目の平成29年度には、次の2点を具体的な実施項目として設定した。1、原子力発電と気候工学技術を対象として、実施後の予期せぬ利用停止(撤退)の悪影響を軽減するための技術戦略について、文献や数理モデル分析に基づく検討を通じて、政策的示唆を導く。2、レジリエントな技術システム戦略策定に関する基本方針、意思決定規準、重視すべき要件等について、文献、インタビューおよびアンケートによる調査を通じて整理・考察を行う。 実施項目1、としては、連携研究者らとともに、気候工学のうちで特に太陽放射管理(微粒子を成層圏に散布して温暖化を緩和する方策)に着目した検討を行った。太陽放射管理の実施後の利用停止のリスク(急激な気温上昇)は、従来の主に気候学者による分析によって深刻に捉えられがちであったが、そのリスクは当該技術の実施の規模に依存し、規模が小さければリスクが便益と比べて小さく済む可能性が高くなることを踏まえて、実施を開始する場合の規模の選択については、さまざまな利用シナリオを検討の上、市民を含むさまざまなステークホルダーの関与による議論を行うべきとの示唆を得た。この成果は国際学術誌の論文(共著)として発表した。 実施項目2、としては、大学院生とともに、レジリエントでかつサステイナブルなエネルギー供給という観点から重視すべき要件を文献調査に基づく考察によって得て、複数の指標群として整理した。その上で、自治体およびエネルギー事業者を対象としたインタビューおよびアンケートを実施することによって、それぞれの指標の現状値と政策上の重要度(ウエイト)について定量的な知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
気候工学に着目した実施後の予期せぬ利用停止(撤退)を考慮した技術戦略については一定の進展が見られ論文発表に至った一方で、原子力発電に着目した分析については、発電技術の動学的変化を扱うための詳しい数理モデルの設計およびプログラミングは行ったものの、プログラミングソフトウェアの環境設定等に時間を要し、モデルの計算と分析の結果を得て十分な考察を行うには至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度には、原子力発電に着目した利用停止(撤退)を考慮した技術戦略について、これまでに構築した動学的な電力供給技術モデルを利用した分析を行い、政策的含意を導く。また、自治体およびエネルギー事業者を対象とした調査によって得た情報に基づき、階層分析法(AHP)の適用等によって、エネルギー供給のレジリエンスとサステイナビリティを効果的に高めるために優先的に実施すべき政策に関する示唆を得る。さらに、本研究課題の関係者と研究会を行い、研究開始以降に得られた成果をもとにして、停止(撤退)の可能性を考慮した場合のエネルギー・環境技術全体としてのレジリエントなシステム戦略について議論し、提言をまとめる。学術論文としての成果の執筆・公表も行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)将来の利用停止リスクのある技術として取り上げたもののうち原子力発電について、それを含む動学的な発電技術利用戦略の数理モデルを用いた分析評価を行うためにモデルの設計とプログラミングを実施したが、その際、モデルのプログラミング環境設定、関連情報を得るためのインタビューなどに予想以上に時間が割かれ、このモデルの計算と分析の結果について議論して対外発表を行うには至らず、会議開催・参加費および論文執筆・投稿費として予定していた分の執行を行うことができなかった。 (使用計画)計算・分析結果に対するフィードバックを得るために、関連研究者ミーティングの開催・参加を行い、研究成果の深化を図った上で、成果をまとめて学術論文の執筆・投稿を行う。そのために種々の研究旅費、謝金、消耗品等の支出を要することから、次年度使用額を執行することが見込まれる。
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