エネルギー・環境技術に関わるレジリエントなシステム戦略の検討の方法論の構築とその適用を目的とし、過去のさまざまな技術の利用と停止(撤退)影響対処に関する基礎調査を行った上で、原子力発電、気候工学、都市エネルギーシステムを評価分析対象として採り上げ、研究期間全体を通じて以下のような研究を実施し成果を得た。 1、将来において停止に追い込まれるリスクを考慮した原子力発電のレジリエントな利用戦略を導き出すための数理モデルを提示し、その適用を行った。原子力発電の外部費用や代替となる再生可能エネルギー発電等の設置費用といった種々のパラメータ別に費用面で望ましい利用と停止のパターンの提示を行うとともに、利用停止による悪影響を抑えるための節電の意義等を確認した。 2、微粒子を成層圏に散布して温暖化を緩和する気候工学について、その実施後の利用停止に関わるレジリエンスの考察を行った。実施後の利用停止に伴う急激な気温上昇リスクは、この技術の実施規模に依存し、規模が小さければリスクが便益と比べて小さく済む可能性が高くなることを踏まえて、実施を開始する場合の規模の選択についてはさまざまな利用シナリオを俎上に載せて議論すべきとの示唆を得た。 3、都市エネルギーシステムに関して、レジリエントかつサスティナブルな電力供給という観点から重視すべき要件を、文献調査に基づく考察を通して複数の指標群として整理した。各指標について2つの都市の状況を調査するとともに、両市のエネルギー担当者、学識経験者など計35名からのアンケート回答を得て、階層分析法を適用することによって各基準の重要度の重み付けを行った。その結果を踏まえて、両市における都市エネルギーシステムの効果的な改善方策を提示した。 最終年度においては特に上記3点目に関する分析評価と成果のとりまとめに注力し、査読付きの英文学術誌論文(共著)として発表した。
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