|
景観法が制定されて以降、我が国における景観団体数は増加の一途であり一見進展しているようであるが、景観色彩の誘導方法は数値で彩度の上限を決めるにとどまることが多く、画一的な傾向にあり、地方の歴史・文化性、住民の受容を考慮するまでに至っていない。本研究は景観法の趣旨である地域再生を目論み、日本の景観を色彩から捉えた「環境色彩」を中長期的に改良する手法を開発することを目的としている。平成29年度は以下の研究を行った。
１．歴史性アプローチ：昨年度に行った歴史的町並みにおける屋外広告の色と形に関する評価実験の分析をさらに進めた。この結果、3つの街並み「妻籠」「京都」「高山」のどの街並にも共通して次の傾向がみられた。例えば許容される看板の背景色はR~Y系の低明度低彩度が高かった。このとき、看板の文字色は同系色であるR～Y系の明度差３の色と、無彩色の白と黒の許容が高かった。対比色のB系の文字色は許容が低かった。被験者の属性を見ると20代の方が60代以上よりも評価の差が大きかった。これらを査読論文誌に投稿し、掲載された。
２．現状分析アプローチ、諸外国先進事例アプローチ：国際学会において色彩計画について講演し、国内外の研究者と各都市の環境色彩に関する情報交換を行った。また、設計業務を行っている設計者に対しても色彩計画について講演し、実務における色彩計画の問題点などを抽出した。これらの結果をもとに、実際に学生宿舎や教育施設の色彩計画に応用した。
以上、国際学会での招待講演や、専門誌への掲載、日本建築学会、日本色彩学会等に論文掲載や口頭発表を行った。
|
