研究課題/領域番号 |
15K00683
|
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
松村 哲也 信州大学, 理学部, 研究員 (20617419)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 森林環境色彩 / 高視認性 / 労働安全衛生 / 死傷事故 / 作業用被服 / 林業 / 森林 |
研究実績の概要 |
わが国面積の約70%に至る森林の維持管理事業の担い手である「林業」は極めて死傷事故が多い業種であり、改善が渇望されている。本研究では、低コストかつ導入容易な安全方策として色彩による注意喚起効果・意思伝達機能に注目した。森林環境を構成する色彩を数値化し、「注意喚起・意思伝達」に秀でた「機能性色彩」を求め、これらの色彩を作業服や装備などに反映する安全カラーデザインシステムの構築を目指している。平成28年度(第2年度)は、(1-1)森林環境色彩の測定については、沖縄県・鹿児島県・広島県・大阪府・京都府・三重県・岐阜県・石川県・富山県・長野県・新潟県・群馬県・東京都・青森県を訪問し、予備調査ならびに色彩情報の測定を実施した。一部の調査地については複数回訪問し、気候、緑葉・紅葉や降雪の有無など季節変化や、樹種構成の違いによる環境変化を捉えるべく測定を実施した。測定に際しては、森林環境を構成する要素について写真撮影を行うことを基本に、東西南北4方向の視野ならびに可能な場合には360度パノラマと全天球の撮影を実施した。加えて、入射光環境情報として可視光照度ならびに紫外光強度の測定を行った。(1-2)既存の被服・装備品の色彩情報の測定については、八戸市森林組合による林業用防護装備コレクションへの追加品ならびに、10月に京都府福知山市で開催された『2016森林・林業・環境機会展示実演会』にて各社の製品から色彩値測定試料の収集を行った。その他、八戸市森組、森林総研の協力を得て、使用後のチェーンソー防護パンツの色彩値測定を行った。 一方、2015年10月のJIS T 8127(高視認性安全服)制定を受け、次のステップとして、より広範な中低度危険状況での高視認性安全服に関しても、国内規格の制定とISO上程への検討が始まった。蛍光赤黄オレンジに加えて、蛍光緑桃など多種の色彩の制定が見込まれている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画全体としてはおおむね順調であるが、27年夏季の多雨、冬季の積雪不足に起因する色彩測定回数不足の補完に向けて調査手法・使用機材を見直し、調査のスピードアップと採取試料数の増加を図ったが、28年度も降雨による野外測定不能日が多い結果となった、最終年度に想定していた予備的日程を活用し、量的質的に良好な測定の実施を行う。 また、最終年度ではアイトラッキング装置を利用した調査を予定しているが、当初購入を予定していた装置の開発・製作元の買収により入手・利用が困難となり、現在代替可能な装置の機能性能について検討を進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
(1)天候への対応:初年度の天候不良に加え、28年度も降雨によって測定回数が不足気味であるが、速度と精度を改良した調査手順の採用と、調査人員の増強によって測定回数を確保する。さらに、28年度より強化している「地域性」「樹種」への対応を更に進め、蓄積データセットの質的向上を目指す。 (2)JIS規格対応:JIS T 8127(高視認性安全服)の運用開始に続き、より広範な中低危険度作業における高視認性安全服への国内規格制定への準備が始まり、作業用被服の色彩に関する準法的枠組みの整備が進んでいる。本研究にもに大きく影響する動きであり、ひきつづき対応を進める。 (3)蛍光色対応:中低危険度安全服規格(EN1150)のJIS化・ISO化の動きにより、JIS T 8127で規定された色彩以外にも、対応する蛍光色色彩の種類を広げる必要が高まった。JIS規格上程グループとの連携を保ちつつ、測定機材の蛍光色彩への対応拡大を計る。 (4)アイトラッキング装置:当初予定していた機材の開発・製作元企業が他社によって買収され、予定機材の入手・利用が困難となった。代替可能なアイトラッキング装置数種について、現在機能・性能を確認し、検討を進めている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(1:測定調査旅行の延期)27年夏季の多雨ならび積雪不足、28年夏季の降雨による調査不能により、高山域、積雪環境ならびに島嶼部における調査・測定旅行の延期回数が嵩んだため、主に旅費及び人件費の区分において次年度使用額が生じた。 (2:色彩計等購入の保留)JIS T 8127(高視認性安全服)規格の制定を受け、より広範な対象を持つ中低危険度安全服(例:EN1150)規定のJIS規格化への検討が始まったことから、本研究においても当該規格の内容を考慮する必要が生じ、特に蛍光色の扱いについて性能の再検討を要するため機材購入を保留しており、物品費における次年度使用額が生じた。 (3:アイトラッキング装置等購入の保留)購入予定機材の開発製造元が他社により買収され、当該機材の購入・利用が困難となった。現在同等品の性能評価を進めており、購入を保留していることから、物品費における次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度請求額は、H29年度請求額と合わせて下記のような使用を計画している。 (1:調査測定旅行)初年度・次年度における調査・測定不能事案を回復すべく、改善した調査手順によって調査速度の向上を図るとともに、調査人員の増強によって測定回数の増加を図る。 (2:測定機械購入)(色彩計)現在、JIS T 2187認証機関ならびに中低危険度安全服規格上程ワーキンググループと連携をとりながら、機材の要求性能の確定を進めている。EN1150規定へ対応できる機材の調達を進める。(アイトラッキング装置)購入予定機材と同等の性能を有する機材の性能評価を急ぎ、調達を進める。
|