研究課題/領域番号 |
15K00690
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研究機関 | 金沢美術工芸大学 |
研究代表者 |
荷方 邦夫 金沢美術工芸大学, 美術工芸学部, 准教授 (40347357)
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研究分担者 |
島田 英昭 信州大学, 学術研究院教育学系, 准教授 (20467195)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | デザイン評価 / ナラティブ / 二重過程理論 |
研究実績の概要 |
今年度実施した研究は以下の通りである。 (1)人工物の評価における情報の質 前年度実施した人工物のレビューに関する研究では,ユーザーによって利用価値が高いとされる情報について,質的カテゴリによる差異があることが示された。その中で,利用価値が高くないと評価された内省的カテゴリの情報について,利用可能性が情報に対する共感性と関連があると仮説を立て,共感性との関連を検討した。結果として,共感性との若干の関連があるものの,利用可能性をコントロールする働きは弱いことが示された。この結果から,内省的情報の利用可能性の弱さが指摘できるとともに,共感性の操作に問題がある可能性も残された。本研究についてはさらに検討を続けるとともに,デザインされた人工物の評価について,審美性を始めとした直観的な情報を中心としたモデル作成が必要かについて検討を行うものとする。 (2)デザイン評価の分類と二重過程理論 デザイン評価のカテゴリにおける本能レベルの評価,行動レベルの評価,内省レベルの評価が,二重過程理論におけるシステム1とシステム2の認知プロセスにいずれに対応するかどうかについての検討を行い,本能レベル・行動レベルでは直観性と高い相関があり,システム1の処理に依存するという可能性が強く示唆された。これに対して,内省レベルがシステム2の処理に対応するという結果は示されなかった。 これらの研究成果の発表については27年度のに実施された研究を学会において発表した(2件)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
28年度に予定していた研究は当初の通り進行したが,結果に関しては当初の仮説を支持するものとは必ずしも言えないことが示された。27年度の研究と合わせて,仮定してた人工物の評価モデルについては再検討の必要がある。これについては29年度に検討を行うが,研究計画に遅延は生じないものと思われる。また,研究成果の公開についても順調に行われており,これについては現在のところ問題は特に発生していない。
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今後の研究の推進方策 |
28年度に行った研究については,人工物のデザインに関する評価において,当初の仮説を積極的には支持しない結果が得られた。これについては,研究の方法について修正が必要であること,そしてモデルの修正に向けた再検討がい必要であることを示唆している。これは最終的なモデルの完成の遅延を含むものではない。さらに,評価の結果得られた知見を使った支援ツールの作成と運用については,予定通り行われるものとなっている。最終年度については,モデルの修正を継続的に行うとともに,デザイン評価とデザインの支援のための方策の運用について,研究の完遂へ向けて活動を行う予定である。 具体的には,これまでのデザイン評価の水準に対応すると考えられるデザイン活動を支援することによって,実際にこれらの評価プロセスと対応した評価の変化が見られるかについての検討を行う。これが支持された場合,仮定したデザイン評価の認知的プロセスが実際に機能していることを示すことができる。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた研究のための出張(学会発表)が予定額より少なく済んだこと,外部発注を予定していた実験のための謝金などが予想よりも少なかったこと。
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次年度使用額の使用計画 |
研究の遂行のために関連する海外出張(1件),また研究代表者が今年度所属機関から与えられた,当該研究の専念期間において,研究活動の受け入れ先(国内)への旅費に主として使用することを予定している。
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