研究課題/領域番号 |
15K00693
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
横山 清子 名古屋市立大学, 大学院芸術工学研究科, 教授 (50174868)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 3Dデジタル造形 / 博物館 / 模型・レプリカ / 3Dプリンタ / 3Dスキャナ / 3D切削機 / NFCタグ / デジタルシボ |
研究実績の概要 |
大阪府立弥生文化博物館における来館者展示巡回システム「考古楽ハンター」の一部で使用するNFCタグ埋め込み模型を製作した。対象とした資料は、銅鏡3点と土器の壺3点であり、壺は3Dプリンタ、銅鏡は切削機での加工が適していることを確認した。特に、光沢が原因で、3Dスキャナでの測定が困難であった銅鏡の1つは、粘土で銅鏡の鋳型を作成し、それを3Dスキャンした後、3DCGデータで凹凸を反転させ、その概形を切削機で造形し、詳細な模様については、レーザーカッターで彫刻することで高精度の模型を得る方法を確立した。展示巡回システムでは、模型を手に取り詳細に形状や模様を見ることができると好評であり、システムの利用者以外の来館者にも興味深く鑑賞いただけた。 南山大学人類学博物館で展示する「触れる展示物」として、実物を触ることによる摩耗を避ける目的で、土偶の模型を製作した。素材の触感を考慮してMDFを材料として切削機で造形し、実物を模倣した彩色を施すこととした。名古屋市博物館では、アクリル板を切削機で造形した銅鏡の模型をレーザーカッターで複数ピースに分割したパズルを展示した。 デジタルシボによる触図作成の基礎研究として、色相環に多角形や円などの図形を割り当てた先行研究を参考として、その図形をモチーフとしたシボが触感により識別できるかの晴眼者による実験を行った。触図への展開については、29年度に検討する。 大英博物館でのロゼッタストーンの触れる模型、ロンドン自然史博物館での説明用の触れる模型、ロンドン科学博物館での説明用アプリの入力デバイスとしての実物模型などの応用事例の調査を行った。情報処理学会のDCC研究会およびじんもんこん2016シンポジウムで発表を行い、有益な助言を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度以降計画は、1)デジタルシボによる絵画表現の実験室実験等、2)人のアクションとインタラクティブに動作する模型の実装と評価、3)学芸員の研究支援模型の制作、4)国内外での情報収集や研究発表を行うこととしていた。 1)について、色相環と図形形状との関連を提案した先行研究を参考にシボを制作してその活用の可能性の実験室実験を行ったことは、概略計画どおりであるが、実装に向けては29年度の継続的な検討が必要である。 2)について、模型を手に取りNFCタグにタッチするとタブレットからクイズの解答が得られる模型や銅鏡パズルを作成し、大阪府立弥生文化博物館と名古屋市博物館にそれぞれ展示し、Webアンケートや行動観察を行うことで計画どおりに実施できた。来館者の行動分析を視線解析により詳細に実施可能であることを、28年度博物館で複数回の視線解析実験を実施することで確認できたことは、計画以上の進捗であったと考えている。 3)学芸員の研究支援模型の制作については、次年度継続実施と考えている。 4)大英博物館、ロンドン科学博物館等での情報収集と、情報処理学会のDCC研究会およびじんもんこん2016シンポジウムでの発表と議論を行うことができ、計画どおり実施できたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は本研究の最終年度となるため、3Dデジタル造形による博物館での展示や研究支援が来館者や学芸員からどのように評価されるかの調査を主として行い、来館者のユーザエクスペリエンスを高める、教育効果、研究支援、視覚に障がいのある人の支援など、目的別の展開事例を示し、国内外の学会での発表、論文執筆を行う。 昨年度継続実施としている、学芸員の研究支援用模型の制作については、名古屋市博物館の学芸員と共同で検討する予定であるが、尾張瓦の複数の破片のデータから木の鋳型の復元を一例として予定している。デジタルシボを用いた絵画表現の事例制作を行う。 名古屋市博物館常設展示室での閲覧時の行動分析を視線解析により昨年度より実施しているので、これをコントロールデータとして、常設展示の一部に3D模型を設置した場合の来館者の行動分析を行い、コントロールデータと比較することで、3D模型のユーザーエクスペリエンス向上効果、教育効果を確認する。 28年度に測定したコントロールデータの国際会議での発表と論文執筆、博物館での3Dディジタル造形の可能性に関する論文執筆、今年度実施する3D模型設置時の来館者の行動分析の結果の学会発表および論文執筆の準備を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
27年度の購入備品であるレーザーカッターについて、申請時点より安価で同機能のものが販売されていたため、それを購入したことによる残予算と、名古屋市博物館、南山大学博物館、大阪府立弥生文化博物館に設置した3D模型の材料を、設置先の博物館において支出いただいたことが次年度使用額が生じた理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
申請時の計画に加えて、3D模型設置に対する博物館の来館者の行動分析実験を視線解析により行うため、分析に適した広角レンズの購入を行う。国際会議での発表を研究補助者の大学院生と共同で実施することが既に決定しており、その参加費の支出を行う。
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