PCソフトを使ってプロジェクタからスクリーンに表示される文字情報は,可読性と情報量のバランスが重要である.しかしながら,表示する文字サイズに関しては,電子表示媒体における視距離と文字の可読性の関連性について定量化された明確な指標がなく,教材制作者の主観に頼って制作されている.このためにスクリーンに近い前列に座るとスクリーンの解像度が低く文字がぼやけてしまい読みづらく,スクリーンから遠い後列に座ると文字が小さく潰れてしまい表示された内容を読み取れない状況が教育の現場で起きている.本研究は,電子表示媒体における視距離による文字の可読性に関わる主観値を定量化するものである.これによって,視距離による表示文字の可読性を担保した文字サイズの推定が可能になる. 本研究の最終年度では,前年度に行った文字表示の知覚的大きさと可読性の評価結果を踏まえ,印刷で使用される文字サイズを決める方法として,JIS S0032で提供されている最小可読文字サイズ推定方法と本研究の比較検討を行った. その結果,可読できる最小可読文字サイズはJIS S0032によって算出された文字サイズとスクリーンに表示する文字サイズで有意な差があり,スクリーン上での最小可読文字サイズは印刷よりも大きく表示する必要性が判明した.また,文字の識別には,視力検査で使用するランドルト環の隙間よりも広いストローク間の隙間が必要であることも明らかになった.一方で,近視距離におけるスクリーンの文字表示はプロジェクタの解像度の影響を受けるため,スクリーン表示での解像度によって補正の必要があることも明らかになった.
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