研究課題/領域番号 |
15K00701
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研究機関 | 福井工業大学 |
研究代表者 |
竹田 周平 福井工業大学, 工学部, 教授 (60511954)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 医療防災 / 防災プロダクト / 医療デザイン / 機能維持 / 医療 / 看護 / 福祉 |
研究実績の概要 |
本研究は,「南海トラフを震源とする超巨大地震」や「首都直下型の大地震」などの大規模地震災害に加え,国内で発生しうる地震災害に備えるため,震災後も医療機関が機能維持させることを目指した「医療防災プロダクトのデザイン開発」を実施するものである.近年の20年間を振り返っても,兵庫県南部地震で病院の機能停止の経験から,我が国は病院の防災性向上に向けた対策が進められる様になったが,その後の新潟県中越の地震をはじめ,東日本大震災でも,病院の機能停止となる被害や一部の機能を失う被害が認められ,震災後の医療・看護活動及び患者に大きな負担が強いられている. この様な課題を解決するため,①看護師の意見を反映した実用性の高いプロダクトを開発,②医工連携による最適な防災減災の向上策の二点に着目し,平成27年度にアンケート調査に基づく課題の把握を実施した.特に上記の①は,看護師からの意見を十分に反映させることに大きな意義があり,また医学と工学の連携が本研究の特徴でもある. このアンケート調査は,医療現場で実際に従事する看護師を中心に,看護師の防災に対する意識レベル,看護師としての防災教育やその必要性に関する認識,医療空間の防災上の課題,震災後に特に機能保持すべき装置や施設の項目に基づき統計調査を実施した. また,当初予定していなかったが,医療・看護・介護に関する医療プロダクトのデザイナー(看護師・救急救命士)とヒアリングすることが可能となり,医療空間で必要となる条件,デザイン上配慮しなければいけない条件などの情報を共有することができた点に大きな成果が認められた.なお,このデザイナーとは次年度以降も継続して,アドバイザーとして協力頂く. また,平成28年熊本地震の発生により,平成27年度末に実施予定であった統計調査および分析が一時停止し,熊本地震の先遣調査を優先した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度は,研究計画の第一段階であるアンケート調査に基づく統計調査を実施した.ここでは,福井県内の医療現場に従事する看護師・医師を中心加え,全国から研修のために福井県を訪問した看護師も加え調査を実施した.また,当初予定していなかったが,医療プロダクトのデザイナーとヒアリングを実施することが可能となり,看護師や救急救命士の経歴を有するデザイナーとしての医療空間におけるプロダクトデザインの留意すべき事項,対患者に対する配慮事項等の有益な情報を入手することができたことは大きな成果が認められた.一方で平成28年熊本地震の発生により,調査が一次的に停止したがこの点はやむを得ない.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年熊本地震により,いくつかの医療機関において被害が発生した.この地震は,これまでよりも震度5弱以上の規模の余震が多く発生するなど,累積で損傷が蓄積されることで被害の拡大可能性がある.またこれにより,負傷者の増加などの新たな課題が予測される.よって,熊本地震の調査を新たに加え,ここで得られた新たな課題を整理し,医療防災プロダクトの開発に反映させる.また,医療プロダクトデザイナーの全面的な協力を得ることが可能となったことから,今後も協働で開発を推進していく. なお,概ね計画通りに遂行できていることから,平成28年も当初計画に上記を加えて研究を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度の年度末に発生した「熊本県の熊本地震」の発生により予定していた調査が一時停止しため,旅費や謝金に関する執行額に変更が生じた.なお,この震災の発生直後,熊本の被災地を対象とした先遣調査を実施したが,これは別の研究経費より支出済みである.また,大学が所在する地区において,全国から看護師が集まる研究を効果的に利用できたことも,支出額の変更に影響をしている.
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度について,前年度に一時中止となった分の調査が,年度開始からスタートしており,現状では概ね研究を計画的に進める準備が整っている.以上から,当初予定通りの計画に加え,追加として,①平成28年熊本地震における調査・分析,②医療プロダクトデザイナーとの協働により,研究を実施する.
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