本研究は,医療施設の防災上の課題を明らかにすると共に,看護師とのヒアリングや統計調査等を通じて,日常の医療活動に影響を及ぼさない医療施設の防災減災システムの最適化を三年間で目指すものである.第一段階では,看護師とのヒアリングやアンケート調査による分析を実施し,システムを構築するための条件を整理した.この段階で特筆すべき点は,調査対象である看護師に加え,当初計画で予定していなかった臨床工学技士や医療機器メーカーのエンジニア,また熊本地震の関係者から,質の高い有益な情報を得ることができたことである.この点は,大きな成果が認められた.第二段階では,ハード面とソフト面の両側面から対策最適な方法を探求した.これに加え,「人工透析」に着目したスマート防災装置をデザイン・開発した.ここでは,人工透析を専門とする病院や診療所の全面的な協力を得て,実際の治療室や透析機器等の調査を医療機器メーカーの立会いの元に実施,システム全体の課題と対策案の改善を実施した.第三段階では,スマート防災装置の第三者機関による検証と改善を繰り返し,防災システムの構築への最適化を実施した.今回予定していた看護師とのヒアリング等の調査に加え,「いのちのエンジニア」と称される臨床工学技士(東京,千葉,大阪,京都,神戸,仙台,熊本等)とのネットワークが構築され,詳細なヒアリングや第三者評価を実施することが可能となった.これにより,医療施設上極めて重要な機器の現状や課題を把握することができた点に大きな成果が認められる.研究の成果は,日本デザイン学会第3支部,日本デザイン学会にて論文を投稿,また日本デザイン学会第三支部では口頭発表を行った. 以上から,概ね計画通りに研究を達成することができた.なお,デザイン案から実用化に向けての取り組みは継続して実施する.
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