平成29年度は「統合・評価研究期間」と位置づけており、本研究のまとめと成果発表を中心に研究をおこなってきた。平成27・28年度におこなったインタビュー調査(芸術人類学、社会運動論、メディア論、死生学、 都市論・建築論、哲学・民芸の研究者との対話から、デザインとの関連を見出すためのインタビュー)を総括し、本研究の中心的興味である「物語-共有」のためのデザイン論とどのように結びつけることができるのかの議論を進めた。とくに、限界があると本研究では考えている従来の「〈問題-解決〉型デザイン」では解決できないような、避けられない問題、すぐには解決できない問題への対応という点について議論し、あらためて「もの」に着目するデザインが必要であると考えた。そこで、ブルーノ・ラトゥールらが提唱するアクターネットワーク理論を援用することとし、ものに着目したデザイン論へと展開していった。この議論をまとめ、日本デザイン学会春季研究発表大会にて発表をおこなった。また、この考えを応用したリサーチ・分析結果をまとめ、国際学会IASDR(International Association of Societies of Design Research)での発表もおこなった。また年度末には、これまでのリサーチをまとめた冊子『ものとものがたりのデザイン研究会』を作成した。
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