昨今、世界中で地震や洪水、台風、津波、噴火などの自然災害、戦争などの人為的災害が起こっている。日本では、2011年東日本大震災時に避難者数がピーク時約47万人、2016年広島土砂災害では約2000人、2016年熊本地震では18万人以上の避難者が発生し、特に災害発生直後の約10日間は避難場所が整備されておらず、多くの避難者は人として最低限の生活を送るために苦渋の選択を強いられた。不安を感じながらも指定避難所を、自家用車を所有している場合は車中泊、中には野宿を選択せざる負えない避難者も多く存在した。 このような状況を踏まえ、災害発生直後に安全で安心して避難でき、避難者自身が特殊な技術や道具などを使用せず容易に組み立てできる施設を開発することがこの研究の目的である。 最終年度は、昨年度までに調査や検討した結果から得られた、避難の状況、避難施設として求められる性能や条件をもとに、基本設計、実施設計を行った。また、研究課題である乾式工法、軽量、高断熱、大空間(ロングスパン)、運搬容易性(モバイル可能性)を確認し、さらなる性能の向上を実現するために、BIMデータと複数のモックアップを製作した。 BIMデータにおいては主に屋内の快適性を確認し、快適性を確保するために熱流体解析(CFD解析)を行った。特に夏至と冬至において気温が快適域に保てるように、外皮となるフィルムを二重にし、さらにその二重膜の中をファンで換気することで課題を解決した。 またモックアップを製作することで、施工の容易性、組み立ての容易性、経済性をより精度の高いレベルで確認した。その過程において、様々な分野の専門家と協議する中で、外皮の素材として、多くのフィルムの中からPOフィルムを選定することにした。 最後に、研究成果を社会に発信するために芸術工学会主催の「減災デザイン&プランニング・コンペ2019」に応募し最終公開審査で発表した。
|