研究課題/領域番号 |
15K00717
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
渡瀬 典子 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (90333749)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 手づくり / 生活文化 / 家庭科教育 |
研究実績の概要 |
生活文化における「手づくり」という日常的生活行為に注目し、人々の生活価値観形成、地域社会の生活文化の継承・創出について検討をしてきた。本研究の枠組みは以下の3点である。1.近現代の生活における「手づくり」に対する意味づけ・思想的系譜を家政学的アプローチと生活科学論的アプローチから整理・分析、2.学校教育(主に家庭科教育)、社会教育における「生活文化」の継承・創出、「手づくり」に関する実践の教材解釈・意味づけの変容分析、3.「手づくり」を通した社会参加活動、社会関係資本形成などの事例分析 平成30年度は「枠組み1」について「衣服を手づくりすること」の意味づけ・捉えを全国紙の生活欄(家庭欄)の記事から分析した(研究成果は学会で発表)。1950年代の記事では「実用」という側面から、子ども服から農業用の改良着まで多岐に渡る手づくり記事が掲載されていた。2017年には衣服の手づくりに関する記事は激減したが、震災復興の際の生活再建において手芸・編み物などの手づくり活動が住民の「精神的支え」になりうることが言及され、「手づくり」に対する語られ方に変化が見られた。 「枠組み2」については「21世紀型スキル」とアメリカの学校家庭クラブ活動との関わりに焦点を当て、社会教育との連携、文化的活動の取り組み等について考察をした。日本の高等学校学習指導要領でも、社会との関わりを視座に置いた学校家庭クラブ活動の充実についてふれられており、今後の展開について検討し、成果を発表した(口頭発表)。 「枠組み3」については、「高齢者生きがいづくり事業」に着目し、同事業における社会参加活動について論文化を試みている。また、「枠組み2」と「枠組み3」に連なるものとして、家庭科教育が社会関係資本形成にどのように寄与できるか、考察した結果を国際学会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年度は「枠組み1」の関連資料の収集とともに分析・成果発表を実施した。これまで成年女子(主に主婦層)、女子中高生を主な購読層とする資料を扱ってきたが、多世代(男性を含む)が読む新聞記事を対象に「手づくり」とメディアとの関係性について分析・報告することができた。また、「枠組み2」も枠組み1と同様に関連資料の収集とともに、現代のアメリカの学校教育(家庭科教育)における身に付けるべき能力観について分析・報告を実施することができた。また、「枠組み3」に関する事例及び資料の収集について、当該研究課題終了後も継続して研究を実施する方向である。 当該研究課題は、当初の研究計画では平成30年度が研究終了年度である。しかし、年度末に「枠組み2」と「枠組み3」に関連する研究について口頭発表を行った際、プロシーディングの提出が課せられることになり、追加資料の収集・検討が必要になった。そのため、研究期間の延長を申請した。以上の状況から「(3)やや遅れている」という自己評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
年度初めの研究計画では予定していなかったプロシーディング作成を年度間際に実施することになり、当該研究の延長を申請したが、現時点でプロシーディングは既に提出済である。「枠組み1」についてはこれまで収集した資料をもとに、成果報告をさらに進める予定である。「枠組み2」は、衣生活以外に食生活に関する「手づくり」という観点も含めて、実践事例を分析し、成果を発表する。「枠組み3」に関する研究は、これまで口頭発表等で発表した内容を再分析して論文化する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度初めの研究計画では予定していなかったプロシーディング作成を年度間際に実施することになり、追加資料の収集・検討が必要になったため。次年度使用額はプロシーディングの作成のほか、当該研究の成果発表に用いる。
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