研究課題
本研究は、生活文化における「手づくり」という日常的生活行為に注目し、人々の生活価値観形成、地域社会の生活文化の継承・創出について検討をしてきた。本研究の枠組みは以下の3点である。1.近現代の生活における「手づくり」に対する意味づけ・思想的系譜を家政学的アプローチと生活科学論的アプローチから整理・分析、2.学校教育(主に家庭科教育)、社会教育における「生活文化」の継承・創出、「手づくり」に関する実践の教材解釈・意味づけの変容分析、3.「手づくり」を通した社会参加活動、社会関係資本形成などの事例分析平成31/令和元年度は「枠組み1」について全国紙の生活欄(家庭欄)の家庭調理に関する記事から「調理すること(手づくり)」の意味づけ・捉えを分析した。1950年代と現代の記事を比較すると少人数用のレシピになり、平均調理時間も短縮化する傾向が見られた。また、1950年代の記事では「家庭調理」の目的が「節約」であり、読者(調理者)は「女性(主婦)」を想定した説明がされていたが、現代は「栄養への配慮」を主目的とし、想定読者は主婦だけに限定されない書き方に変化した(研究成果は学会で発表)。「枠組み2」についてはイギリスの中等学校における調理の学習に焦点を当て、生徒が身に付けるべきスキルをどのように捉えているか、各学校の指導計画等をもとに考察した(研究成果は学会で発表)。また、日本の家庭科教育を通して身に付けるべき調理スキルについて、「食事を整える」という観点から検討し、成果を発表した(論文)。「枠組み3」については、高齢者とコミュニティ形成に着目し、高齢者の社会参加活動について検討した。事例を見ると「手づくり」を通した社会参加活動は、中高年の女性が多く、男性が活動に参加するためのきっかけづくりが課題となっていることが改めて浮き彫りとなった。
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東京学芸大学紀要 総合教育科学系
巻: 71 ページ: 385-393
Home Economics/Family Studies/ Human Ecology/ Family & Consumer Science Education: Issues & Directions
巻: 15 ページ: 198-206