本研究の目的は、女性教員を対象とした調査を実施することにより女性教員の家族形成に伴う就業継続とキャリア形成の実態と問題を明らかにし、男女共同参画基本計画に掲げられた「2020年までに指導的地位に女性が占める割合30%」の目標に対し、教育資源の活用の観点から学校教育分野の具体的な取り組み課題を提示することである。具体的な研究課題は、①女性教員の就業継続とキャリア形成の実態と問題を明らかにし管理職登用のための課題を明らかにすること、②家族形成に伴う多様な経験が教育資源としてどのように活用され得るのかを実証的に明らかにすること、である。 平成27年度は茨城県女性校長・教頭会を通じて質問紙調査を実施した。調査対象者は県内公立小中学校勤務の女性学校管理職教員232名である(有効回答率52.8%)。 平成28年度は調査結果をまとめ学会誌に論文を発表した。分析結果からは、出産・子育て経験を教員としての力量形成に役立つと認識している教員が多いことが定量的に確認される一方で、子育て期間が長期化すると力量形成機会阻害感が高まることも確認された。 平成29年度は、女性管理職登用のための課題を明らかにすることを目的に、質問紙調査の結果を再分析し、第19回アジア地区家政学会にてポスター発表を行った。学校管理職と一般管理職の生活時間と比較すると学校管理職は勤務時間が有意に長く睡眠時間が有意に短いこと、中でも教頭で多忙さが際立っていること、教員の力量形成に役立ったことでは日常的な職務遂行の蓄積と回答した割合が過半数を占めたこと、を指摘した。以上から、女性教員の管理職への登用促進に向けた課題として、管理職教員の職務内容を精選し教頭職のサポート体制を強化すること、中堅教員として教職専門性を高めていく時期に多様な職務経験をつみ管理職としての力量形成がはかれるよう丁寧にサポート体制を構築していくことを指摘した。
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