研究課題/領域番号 |
15K00724
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
河野 芳海 静岡大学, 工学部, 准教授 (50334959)
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研究分担者 |
福原 長寿 静岡大学, 工学部, 教授 (30199260)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 天然色素 / メソポーラスシリカ / 複合化 / 安定化 |
研究実績の概要 |
実施計画に従い,天然色素と無機ホストとの複合体を調製し,それらについて種々の安定性向上の評価を実施した。 βカロテンとメソポーラスシリカとの複合体について詳しく検討を行った結果,無機材料との複合化は,光に対する耐久性のみならず,加熱時の色素の安定性向上にも効果を示すことが分かった。得られた複合体における色素の存在状態を解析したところ,ホストであるメソポーラスシリカが3価の金属イオンを含有する場合に,金属イオンが色素分子の吸着サイトとして働いて,色素分子は細孔の深くまで吸着されることが分かった。このときに色素の安定化効果も最も大きかったことから,無機材料によるシールド効果が安定性向上に大きな寄与をしていることを確認した。 粘土層間を界面活性剤でイオン交換した有機修飾粘土を用いて,疎水性の天然色素を物理混合で複合化できることを確認した。簡易なボールミルを使用して物理混合する際の最適条件を決定し,課題であった複合体調製の再現性を得ることが出来た。物理混合の際,わずかの溶媒を加えることで複合化の効率が大きく上がることが分かったが,これは微量の溶媒が色素粉末から分子を引き離し,続いて有機修飾粘土の層間にスムーズに移行させる働きをしているためであることを明らかとした。この知見を元に,それぞれ性質の異なる天然色素に対して加える溶媒について最適なものを予測し,実際にそれらが複合化に効果的であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
βカロテンとメソポーラスシリカとの複合体について,加熱時の安定性を詳細に検討し,複合化によって内包する色素の耐熱性向上も実現できることを確認した。安定化効果は色素が細孔内に取り込まれる場合に強く発現し,また吸着サイトとして金属イオンを導入すると安定性向上の効果も高まることから,色素分子は細孔内の比較的深くまで侵入していることが推測された。また,物理混合による色素複合体の調製方法について,最適条件の決定に至った。以上の通り,概ね当初の実施計画に沿ったものであった。
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今後の研究の推進方策 |
色素分子の取り込みが安定化に効果を示すことから,色素分子と強い相互作用をする無機ホスト材料の作成を行う。必要に応じて,既存の材料に有機修飾等を行い,色素分子との親和性をより高める。得られた新規複合体について耐光性および耐熱性の評価を実施する。 また,色素と無機ホストとの間の相互作用による色素の発色制御について検討を行う。発色変化した状態の色素分子を各種分光法で観測し,色変化の要因を解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の研究では色素複合体の耐熱性評価を優先させた。このため耐光性評価に用いる光源装置の購入に緊急性がなく,次年度使用額を生じた。また加熱装置や粉体混合装置について工夫の結果,当初予定より安価な機器で同等の性能を得ることができた。
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次年度使用額の使用計画 |
耐光性測定を行うための光源の購入を計画しているので,次年度使用額を優先して割り当てる予定である。
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