研究課題/領域番号 |
15K00728
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研究機関 | 新潟県立大学 |
研究代表者 |
村山 伸子 新潟県立大学, 人間生活学部, 教授 (80219948)
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研究分担者 |
大久保 公美 国立保健医療科学院, その他部局等, 主任研究官 (80407577)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 子どもの貧困 / 食事保障 / 世帯収入 / 食生活格差 |
研究実績の概要 |
研究全体の目的は、日本における経済格差にともなう食生活格差の実態把握と対策について検討することである。特に、低所得者の子どもに健康的な食事を保障するための対策について検討することを目的としている。平成29年度は、以下の研究を実施した。 研究1 子どもの成長と健康のための「最低限の食事」の内容と金額を算出した。 小学5年生771人の食事4日間について、食材料の量と小売物価統計を用いて、食費を分析した。その結果、1日平均約860円であり、世帯年収が低い子どもで有意に少なかった。食費と正の相関がみられた食品群は、野菜、果物、魚介、肉、砂糖、飲料であった。食費と負の相関がみられた食品群は、穀類、卵であった。その結果、栄養素では、食費が多いほど炭水化物とエネルギー密度が低く、その他の栄養素の摂取量は多いことが明らかとなった。 この研究により、子どもの食生活格差対策として、食費を上げること、そのための所得保障が重要であることを示した。 研究2 子どもの食事保障のための政策オプションの検討をおこなった。小学5年生836人の4日間(学校給食がある2日間、無い2日間)の食事を分析し、世界の中で学校給食がある日は、子どもの食生活格差が縮小することを明らかにし、論文で発表した。日本で初めて、学校給食という国の栄養対策が、食生活格差の縮小に寄与することを明らかにした点で大きな意義がある。本研究成果は、日経新聞や朝日新聞、各地方紙にも報道された。学校給食が無い夏休み期間においては、生活困窮者支援NPU(フードバンク)による食料支援の効果を明らかにし、論文で発表した。本研究により、地域での取組の根拠が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究全体の目標に対して、計画にしたがい、実施した。平成29年度は、日本において、消費税増税にともなう軽減税率導入の判断がなされた時期であり、日本の食生活格差の実態や対策についての論文化が求められており、それを優先した。そのため、外国の子どもの食事保障の政策についての調査は、文献調査を主として実施し、現地での調査は最少限とした。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は最終年であり、計画どおり、これまでの研究から論文や著書の作成と発表をおこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
貧困対策は、現在日本の政策課題として研究の社会的要請が高く、日本国内についての研究を優先した。そのため、外国の子どもの食事保障の制度研究については、文献研究を重点にし、外国現地ヒアリング調査の費用を縮小したためである。外国の調査は次年度に補足して実施する予定である。
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