研究課題
研究の全体構想は、日本における経済格差にともなう食生活格差の実態把握と対策について検討することである。本研究では、低所得層の子どもに健康的な食事を保障するための対策について検討することを目的とし、次の3点について明らかにする。1)子どもの成長と健康のための食事の内容と金額(研究1)、2)子どもの食事保障のための政策オプションの効果の検討(研究2)、3)諸外国における低所得世帯の子どもの食事保障システムとその効果(研究3)。研究1の結果、子どもの食事について、栄養素等の摂取量が良好な平日は、休日に比べて穀類が少なく、野菜、果物、魚介類等の摂取量が多い特徴がみられ、食費は1日830円であった。研究2の結果、日本における政策オプションとして、国の学校給食制度、NPOの食料支援について、実態調査をもとに検討した。その結果、世帯収入により、平日と休日を混ぜた4日間の子どもの食品・栄養摂取量に格差があること、学校給食がある日では格差が縮小することがわかり、世界で初めて学校給食の子どもの食事格差縮小の効果を論文として報告した。また、NPOフードバンクによる夏休みの食料支援は、低収入世帯の子どもが3食食べる、必要な食品の摂取を増やす効果があることから、有効性が示された。研究3では、アメリカにおける低収入世帯に対する主要な食料保障プログラムは、①SNAP、②学校給食の補助、③WIC、④学校での朝食プログラム、⑤子どもと成人の食料プログラムについて検証した。その効果については、必ずしも一定の効果があるとは言い切れない。以上の世帯の社会経済的状況と食生活との関連のエビデンスは、子どもの貧困対策の推進の根拠となる意義がある。令和元年には子どもの貧困対策の推進に関する法律の一部が改正され、子どもの貧困対策に関する大綱に指標として、食料が買えない経験等が追加された。
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Nutrition
巻: 70 ページ: online first
doi.org/10.1016/j.nut.2019.110598