研究課題/領域番号 |
15K00733
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研究機関 | 放送大学 |
研究代表者 |
奈良 由美子 放送大学, 教養学部, 教授 (80294180)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 生活リスク / リスクリテラシー / リスクリテラシーの構造 / リスクの実相 / リスクの認知 / リスクへの対処 / 教材開発 / リスクコミュニケーション |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、現代日本に生きる個人にとって身につけることが求められるリテラシーとして「生活リスクリテラシー」を位置づけ、その視座を明らかにするとともに実践モデルを開発することである。研究は以下の4つの課題から構成される。(1)生活リスクリテラシーの概念の明確化、(2)生活リスクリテラシーの具体的内容の整理と提示、(3)生活リスクリテラシーに関する社会人向けの教材の開発と授業実践、(4)日本社会にあった生活リスクリテラシーの涵養にむけての今後のマイルストーンの検討。 平成28年度は、課題(3):生活リスクリテラシーに関する社会人向けの教材の開発と授業実践(生活リスクリテラシーの構成要素を包含した社会人向けの教材を開発し研究授業を実践、その内容を評価する)を中心に行った。同年度のおもな研究成果は以下の通りである。まず平成27年度に実施した授業(51人、80分×8コマ、2クラス)から得た授業評価データを分析したところ、受講によりリスクの様相・認知・対処への理解が高まったと自己評価するものが9割を超えていた。さらに自由回答をテキストマイニングした結果、学習者はリスク問題を自らの生活(家族、地域、職場)の文脈になかに位置づけ主体的に受講していたこと、リスクマネジメントとリスクコミュニケーションの両方の重要性を再認識したこと等が分かった。とりわけ、リスク認知の多様性ゆえのリスクコミュニケーションに意義を認めつつその具体的手法を理解したことに対する大きな満足感が認められた。これらの知見とともに、授業評価データからさらなる学習ニーズを抽出し、それを教材に反映させたうえで、28年度にはあらたな研究授業を実施した(64人、80分×8コマ、2クラス)。研究成果は、国際会議での研究報告やテキスト出版等により公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題はおおむね順調に進捗している。成果発表としても、平成28年度には国際会議での報告が2本、国内学会での報告が2本、さらには研究授業を反映したテキスト出版1冊および一般向けハンドブック1冊があり、研究知見を実践に結びつけるかたちで研究全体が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、平成28年度に行った研究授業データをさらに分析する。また、あらたな研究授業を2クラス(受講者合計160人の見込み。80分×8回)を予定している。授業内容と授業評価を分析・考察したうえで、課題2(生活者に必要な生活リスクリテラシーの具体的内容の整理と提示)ならびに課題1(生活リスクリテラシー概念の明確化)に戻し入れるとともに、課題4(日本社会にあった生活リスクリテラシーの涵養にむけて今後のマイルストーンの検討)と全体のまとめを行う予定である。成果の公表としても、国際会議での報告、放送授業の新規開設を含めて積極的に取り組みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度に海外出張を2回予定していたが、研究の進捗を鑑み1回にしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は成果公表に力点を置くこととなり、そのための旅費や英文校閲、報告書作成等に充当する予定である。
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