本研究では、東京と名古屋において中年期から高年期へのライフステージの移行と夫婦のソーシャル・ネットワークという観点から、①夫婦関係、②世代間関係、③老後への不安感を明らかにすることを目的として量的調査を中心とする実証調査を実施した。2016年10月に東京と名古屋に在住する55歳から75歳の既婚の男女計2000名に対して調査票を郵送配布し、906票の有効票を得た。なお、調査結果を希望する対象者には、2017年春に主要項目の集計結果冊子を配布した。また、インタビュー調査へ協力してもよいという対象者に対して、2017年および最終年度にインタビュー調査を実施した。最終年度は、量的調査の詳細分析を中心的に行ったが、研究分担者は、祖父母役割遂行の志向性について、他のアジア諸国に関する分析結果との比較を国際学会で報告した。また、その際の分析視点を家族社会学のテキストの分担執筆にも反映させ、社会的還元を図った。国際学会で得られたフィードバック等は、今後の世代間関係に関わる国内政策の検討にも応用できると思われる。 なお、夫婦関係や老後への不安感に関する知見については、現時点においては対外的な発表は行っておらず、最終的な成果報告書にその知見についてまとめるに留まっているが、今後早い段階での研究論文の発表や学会報告などを行うことにより、その成果を広く公表する予定である。これらの研究成果は、中年期から高年期への移行によって彼らが経験する役割の変化とそれに伴うソーシャル・ネットワークのありかたの変化に着目し、個人や夫婦関係の様相を明らかにしようとするものであり、高齢者の孤立化・老後に対する不安感、そして近年増加傾向が指摘されている熟年離婚といった社会問題の理解とそれらへの政策立案に役立つと思われる。
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