本研究は家族を介護し、家族を亡くされた死別経験者の心理変容プロセスを縦断的に解明することが目的である。前回調査時点(2004・2005年)と2017・2018年現時点での看取りのケアと死別経験の捉え方に相違があるのかどうかを明らかにした。その結果、前回調査時、死別経験を意味あるものと捉えていた者については、現在でもその死別を意味あるものとして捉えており、生の延長線上として死別を捉えていた者については、現在でも同様に捉えていた。ただし、悲嘆の中にあった者については、時間の経過と共に、死別を意味あるものとして捉えるようになったという変化が認められた。どのような経験、意味づけであっても、大切な方との死別後、日常を営むということが死別経験後のレジリエンスなのではないかと推察された。 前回の調査時から10年以上が経過しており、身近な対象者との死別経験も増え、調査協力者自身も年齢を重ね、死をより身近に感じるようになったと語る者が多かった。そして、前回調査時には理解しようとしても理解し辛かった死別相手の死に対する思いがどのようなものであったのか、心身共に衰えるということがどういうことなのか、といった思いを重ねることができるようになったとの語りも多く得られた。死に対する不安・恐怖については、十分生き切ったと思うこともある反面、やはり死ぬというのは怖いと思うこともあるといったアンヴィバレントな感情が日常を行きつ戻りつしているという結果が得られた。
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