研究課題/領域番号 |
15K00755
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
米村 敦子 宮崎大学, 教育文化学部, 教授 (10167041)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 南九州 / 隠居家 / 隠居制度 / 離れ形式 / 住文化 |
研究実績の概要 |
本研究は南九州における隠居家の変遷とその住生活に関する住文化の研究であり、初年度においては、従前の継続研究により隠居家の伝統を一部地域で有する結果を得ていた宮崎県日南市を調査対象地に選定し、より詳細な地区状況を把握する目的で、全6地区(飫肥・吾田・油津・東郷・細田・鵜戸・酒谷・北郷・南郷)の全154自治区を対象に、「隠居家と住文化に関する地区調査(調査項目:地区の住宅形態、地区生活の変化、隠居制度の伝統と現状、隠居家の現状、隠居家の形態、隠居家の変化、隠居家内の生活、住文化の伝統と変化、地区の伝統的建築物、地区住環境の課題等々)」を実施し、108票の回答を得て(回収率70%)、結果の分析を行った。 地区の地域特性の違いにより隠居家の伝統には大きな差があり、6地区中4地区において、「隠居家が今も残る」「わずかに残る」という結果を得られた。隠居家の建物配置は、主に「隠居家が本家と別棟(離れ)」の形式で、その他、「隠居家が納屋等の一部(2階等)」「本家に付設(玄関等は別)」がわずかに見られる。全体として、隠居家が残っている場合も空き家が急増している現状が明らかとなった。隠居家の伝統に関する意見では、「親子2世代の住み方として現代も合理的だと思う」という意見が比較的多く見られる一方、「昔の古い風習だと思う」や「敷地的余裕が必要」の意見もみられた。隠居家以外で地区に残る伝統的建築物には、古い農家、古い商家、武家屋敷、古い洋館、神社等があげられている。住生活に関する生活文化や生活技術の伝承は比較的少なく、一方、地区の地蔵様や神様、行事や祭事は大切に伝承されている。地区住環境の課題として、地震や台風等の防災問題、交通道路、病院、福祉施設、保育施設等の問題が明らかとなった。地区の人的交流や自然、文化が最も尊ばれていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
日南市の全6地区、全154自治区を対象に、隠居家と住生活及び住文化の実態について、きめ細かく調査を実施することができ、地区ごとの詳細な実態及び地区特性を把握することができた。これを他市町村まで広げ、複数の自治体で実施する計画を考えていたが、そこまで進展できなかったので、研究課題の進捗状況として「やや遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に実施した調査を複数の他市町村に広げて調査し、南九州のより広い地域特性を把握する。さらに、地区調査の結果により特定された隠居家の伝統を残す地域において、実際に居住されている隠居家の住まい方調査、住宅実測調査を実施し、事例的研究を深め、その実態を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査対象地を日南市に絞り込んで調査を実施したことにより旅費が軽減されたこと、また、調査データの打ち込み等の作業を調査票の読み取り精査のために、学生の研究補助者を雇用せずに研究代表者自らが実施したことから、研究補助の謝金を支出しなかったことにより、次年度使用額が生じることになった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度においては調査地を広げ、また、調査データの整理等に学生の研究補助を雇用することから、旅費及び謝金費として、次年度の請求助成金と合わせて使用する。
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