初年度に宮崎県日南市全154自治区を対象に「隠居家と住文化に関する地区調査」を実施し、全域的に隠居家の伝統が読み取られ、特に旧南郷町地区によく残る状況を把握して、次年度に南郷地区の隠居家及び伝統的民家の住宅実測調査・聞き取り調査を実施した。次々年はえびの市・小林市・串間市・都城市・三股町・高原町において同調査を実施し、先行の日南市を加え宮崎県南部5市2町全782自治区の調査結果を総合的に分析した。これらの研究成果は日本家政学会大会・九州支部大会において1~5報で発表した。 最終年では宮崎県中部2町1市4地区(国富町・綾町・宮崎市旧高岡町地区・同旧田野町地区・同旧清武町地区・同旧佐土原町地区)の計6地域全335自治区を対象に同調査を実施し、結果分析を行った。中部6地域全体では「隠居家が今もよく残る」7.4%、「わずかに残る」29.2%、「残るが空き家が多い」13.4%と、南部地域と比較してやや低率で、綾町と高岡地区では「よく残る」の回答はない。一方、国富町は「よく残る」22.5%と調査対象宮崎県中南部6市4町全13地域中で最も隠居家が残っており、地域差が大きい。隠居家の建物配置は「本家(主屋)と別棟(離れ)」79%、「本家に付設」19.8%、「厩や納屋の一部」13.6%等がある。隠居家は農家住宅に多く、隠居家と本家の生活は「食事も家計も別々」「住み方として現代も合理的」とされていた。隠居家を有す理由として、主に農業の協働と継承と親子の独立性の両立があがっている。地区評価は人・文化・自然に集中する。各地で過疎高齢化が進み、防災・買い物・交通道路等の課題を抱え、隠居家も空き家が増える中、国富町では「人が住む限り本家と隠居家の関係は継続される」「隠居家がなくなることはない」という意見もみられた。この研究成果は2019年度日本家政学会第71回大会で発表(第6報)する(受理済み)。
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