研究課題/領域番号 |
15K00756
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研究機関 | 埼玉県立大学 |
研究代表者 |
中村 裕美 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 教授 (20444937)
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研究分担者 |
京極 真 吉備国際大学, 保健医療福祉学部, 教授 (50541611)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 高齢者住居 / 在宅生活 / 物理的環境 / 地域在住高齢者 |
研究実績の概要 |
地域在住高齢者が認識する物理的家屋環境のリスクと解消法,転倒経験,調査時点でのリスク認識の有無を,家庭訪問で聴取した.転倒エフィカシー尺度(FES-J)と,本研究用質問紙を用いた.FES-Jは日常生活上の質問10項目で構成され,高スコアほど転倒エフィカシーが高いことを示す.本研究用質問紙には,国外で公表されている複数の家屋環境調査紙を参考とした.いずれも日本の住環境に即して標準化されていないため,本研究では,それらに共通する事項を抽出しリストとした.その例には,ちらかり,結束しない電気コード,固定しない家具,不十分な照明が含まれた.これを用い,転倒理由と,解消法(いずれも複数回答)を分類した.転倒経験,解消実施,調査時点でのリスク認識の有無でそれぞれ2群に分け,FES-Jスコアを観察した. 解析対象41名の特徴は,年齢中央値75歳,範囲60歳から89歳,女性83%,独居者51%,高齢夫婦世帯41%であった.リハビリテーションサービス利用者はいなかった.被験者の71%に家屋内転倒経験があり,理由の上位は,スリッパ着用(19名),ちらかり(13名),固定しない敷物(10名)等であった.41.5%が解消を図り,浴槽の手すり設置,トイレの手すり設置(各4名)等の奨励できるものから,敷物をテープで止める(各1名)等,奨励できないものまであった.FES-Jスコアは,転倒経験有無での2群と,解消実施有無での2群には有意差が認められず,調査時点でのリスク認識有無での2群に有意差が認められた(Brunner-Munzel test, p=0.016). 被験者が自信をもって日常生活を遂行できるよう,個々の認識を理解し,具体的に解消法を示す必要がある.介護予防の趣旨に貢献するために,リハビリテーションサービスの未利用者にも,家屋内転倒予防に繋がる情報提供が必要である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度の調査で,在宅高齢者自身が感じる家屋の物理的環境リスクと解消法を確認できた。また、調査時点での物理的家屋環境へのリスク認識の有無が,FES-Jスコアに有意差を生ずるという本研究の結果は,報告ら(2008)確認した地域在住高齢者の日常生活動作の遂行エフィカシー(Occupational Self Assessment)とFES-Jのスコア間には、正の相関関係が成り立つとする知見に通ずる.したがって、転倒予防にかかわる作業療法士が、家庭内の物理的環境の改善に介入するべきであるという、報告者らのこれまでの主張を支持する結果を得ることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、今回の結果をもとに追試を行い、結果の妥当性を検証する予定である。20名を被験者として選出し、複数回の介入を行って、家庭内の物理的環境を生活者が安心できる程度に実施する必要があることを裏付けていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究協力者への謝金を計上していたが、いずれの人々も辞退されたために残額が生じた。また、当初予定よりも近距離で国際学会が開催されたために、旅費に残額が生じた。
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